吉田修一さん原作の同名小説を映画化した『湖の女たち』で、道を踏み外していくインモラルな若き刑事を演じた福士蒼汰さん。松本まりかさんや浅野忠信さんとの共演についてお聞きしました。
──今作は、オール琵琶湖ロケだったそうですね。
はい。撮影期間ずっと滋賀県に滞在していたので、現地での撮影に集中することができました。
自然に囲まれた場所に滞在していたので、飲食店の数も少なく。お店にご飯を食べに行くと、撮影スタッフさん達とばったり会うことが何度もあって、本当にずっと一緒に過ごしているような気持ちになりました。
──作中、美しい自然もたくさん出てきます。いちばん印象に残っているシーンはどこですか?
湖に佳代を飛び込ませ、そのあと自分も飛び込んで佳代を救い出し、ふたりで船に寝転んで話をするシーンです。
あのシーンは、実は2回撮影したんです。湖から船に上がるカットから始まったのですが、冬の寒い中での撮影だったので、なるべく体が冷えないように、洋服や髪を霧吹きで濡らして臨みました。モニターチェックでは特に問題なかったのですが、僕自身も、松本さんもどこか納得いかない気持ちがあって。監督もきっと同じ気持ちで「もう一回やるか」と言ってくれたんです。
用意していただいていたお風呂で一度体を温めて、もう一度トライすることになったのですが、今と同じことをしても、またどこか納得いかないままで終わってしまうのではないかと直感的に思ったんです。そこで、霧吹きで濡れた演出をするのではなく、実際に湖に落ちて本当に濡れた状態でやってみようと。特に言葉を交わすこともなく、僕が松本さんをただ一緒に連れて、湖に落ちてから再挑戦しました。
監督も僕の意図に気がついてくれて、湖に落ちた僕たちを見てすぐに「よーい、スタート!」と船に這い上がるシーンを撮りました。
結果的に、僕も松本さんも納得できるシーンになったと思います。ただ、今思えば、松本さんにも僕の考えを共有して話し合ったうえで撮影することもできたなと反省している面もあるんです。現場では、僕自身も圭介でありたかったし、松本さんとも圭介と佳代の関係性でもいたかった。それゆえの行動だったのですが、松本さんはどう感じているのか気に掛けるべきだったのかもしれないとも思っています。