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――メダルを取るためには、OA(オーバーエイジ)の起用も考えていくと思われます。現時点で、このチームにOAで入れるとすれば、どのポジションの選手が必要になりますか。

 まず、センターフォワードですね。細谷や藤尾(翔太)だけだと厳しいと思うので、点が取れるセンターフォワードがまずひとり。点を取ることを考えれば、攻撃的なMFも必要。荒木や平河(悠)は面白いけど、佐藤(恵允)は独り相撲な感じで、山田(楓喜)は調子の波が大きい。味方を活かして、自分も活きるタイプの選手が入ると攻撃の質がさらに上がる。あとは、センターバックか、サイドバックかなと思います。

――具体的に名前を挙げるとすれば、誰が候補になりますか。

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 センターフォワードが必要だけど、パッと名前が思い浮かばない。日本代表もこの人というエースストライカーがいるわけではないので、上田(綺世)なのか、前田(大然)なのか、戦い方にもよるけど、ここは悩みどころですね。

 中盤は、 OA枠ではないけど、久保(建英)が必要でしょう。パスを多方面に配る藤田との相性が良さそうだし、ドリブルも裏抜けもうまい。久保が入れば、攻撃力がワンランク上がるのは間違いない。彼はパリ五輪世代でもあるので、本大会にはぜひ参加してもらいたい。

 DFでいえば、冨安ですね。高井と木村もいいけど、世界ということを考えると、冨安は欠かせない。彼が最終ラインに入れば、かなり守備が安定するでしょう。旗手(怜央)も面白い。五輪は18名の登録なので、1人で複数ポジションができることが必須になるけど、旗手はユーティリティーな選手なので。ただ、個人的には今回、OA枠は使用しなくてもいいと思っています。

パリオリンピック出場を決めたU-23日本代表のメンバー ©時事通信社

オーバーエイジ枠は「使わなくていい」と考えるワケ

――OA枠が必要ないというのは、なぜですか。

 たぶん、今の選手たちは自分たちの世代だけで戦いたいと思っています。3年もの間、いろんな連携を深めて、苦しい思いをして勝ち取った出場権なのにって思っているはずです。五輪は18名しか行けないので、OA枠で3名削られて、仮にチームにフィットしなかったり、噛み合わない場合は、外された選手はもちろん、戦う選手のメンタルも削がれてしまう。

 もちろん、それなりにリサーチして順応できる選手を選考すると思うけど、実際は試合をしてみないと分からないところが多いんですよ。過去の五輪でOA枠を使って成功したのかというと、必ずしもそうではない。五輪という舞台をどうとらえるかで変わってくると思うけど、今回は今のメンバーで行ってもいいと思います。

――五輪をどういう舞台に設定すべきだと考えていますか?

 メダルを獲るのか、それとも、若い選手が国際経験を積む大会としてとらえるのか。たぶん、二兎を追うと思うんだけど、どっちに比重を置くかで変わってくる。この世代はU20W杯がコロナでなくなって世界での経験が乏しい。いろんな選手が1試合でも多く、世界と戦うことを経験していかないといけないと思うんです。

 若い時の国際経験は、その後の伸び代にも影響してくるので、次の2026年北中米W杯やその次の2030年のW杯に向けての強化の場として、パリ五輪を利用してもいい。そのためには、今のチームの選手たちがさらに成長して、OA枠は必要ないと思われるぐらいのレベルになることが必要。これから大岩監督を悩ませるぐらいになってほしいですね。

取材・文=佐藤俊