15年前“廃校”になった学校が
SAの手前にはなにかのグラウンドらしき高いフェンスが見える。
15年前に閉校となった中学校のものらしく、現在でも体育館は一般開放されているようである。少し離れたエリアには、やはり閉校した小学校の校舎もあった。
談合坂エリアを含む上野原市は、この国の多くの地方がそうであるように、人口が90年代後半から減少傾向に入り、2010年から2020年にかけての減少率は15%を超える。合計特殊出生率も山梨県内で低い水準にあるという。
2020年に開通した談合坂スマートIC周辺の開発は、上野原市の都市計画において重要な位置を占め、廃校となったこれらの小中学校の利活用に関しても、民間事業者からの意見聴取などが行われたが、いまだ具体的なプランは公にされていないようである。
突如姿を現す重要文化財
林道の入り口に戻って再度出発すると、まもなく交差点の先に下り側のSAが見えてくる。こちらも「ぷらっとパーク」となっており、先の上り側よりも駐車場は多めに用意されていた。
下り側のSAから国道20号方面に山を下りていくにつれて、少しずつ民家が増えていく。久々の信号待ちで、交差点角の駐車場を囲む桜が目に入った。池か湖か、駐車場の向こうにわずかにきらめく水面が見える。
入ってみると10台ほど山梨ナンバーの車が止まっており、5組~6組のシニアグループが広場で花見をしながら談笑している。なるほど敷地を覆う桜は満開も満開。視界はそのまま遮られることなく空と水辺へと抜けていく。桜の下、ベンチに少し曲がった背をちょこんと並べ、一様に池を眺める4人の女性たちの姿がなんとも素敵だった。
案内板を見ると、そこは大野貯水池というダムらしい。その歴史は思いのほか古く、都市部への大容量送電発電施設としては国内最初期のものだという。
大野貯水池をその一部に含む八ツ沢発電所は明治45年(1912年)から東京の淀橋変電所に送電していたというから、東京の一般家庭に白熱電球が普及し、工場や鉄道の電化が進んでいく動向を、50km以上離れた場所から支えていたことになる。
八ツ沢発電所の発電関連施設は約14kmの範囲にわたって点在し、その一帯は2005年に国の重要文化財として登録されている。「やまなしインフラガイド」によれば、大正期から昭和期にかけては国指定の教科書に写真入りで掲載されていたというが、現在は基本的に施設見学などは認められていない。
大野貯水池も観光スポットというよりは、地元住民の寄り合い場所といった雰囲気だ。駐車場を出てすぐに弁当屋やタバコ屋、酒屋があり、アルコール類を扱う自販機もあった。おあつらえ向き、というわけだが、誘惑を断ちきり車に乗り込む。