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JR中央線の駅から伸びる“天界への通路”

 国道20号に出るとすぐ、JR中央線の「四方津(しおつ)」という駅の目の前に出る。通常の駅と一見して異なるのは、駅舎から山の上の方に向けて、なにやら天上通路のようなものが引かれている点だ。

四方津駅から階上通路を渡った先に、さらに天上へと伸びていく謎の通路が

 得体の知れない存在感にGoogleマップを開いてみると、その通路は「コモアブリッジ」と名付けられ、向こう側にはそこだけ整然と区画整理された広大な団地のような一帯がある。駅から高層の住宅地へと直結する通路らしい。

 早速通路に上っていくと、中央に階段とエスカレーター、左右には斜め上方へと上っていく珍しいタイプのエレベーターが設置され、視界の届かぬところまで続いている。

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100mの高さまで上っていく階段とエスカレーター

 エレベーターのボタンを押し、階数表示の代わりに扉の上方に設置された奇妙な高度表示に目をやるが、いまいち見方がわからない。3分ほど待っただろうか、ようやくエレベーターが到着した。エスカレーターの方が早そうだが、そちらは通勤通学の時間帯にしか稼働していないらしい。

なかなか目にすることのない形式の高度表示。初見では状況が掴みにくい

 中身はごく普通のエレベーター。斜め上に進む感触には慣れないが、さほど恐怖感はない。が、やはり進むペースはきわめて遅い。

強度上の問題なのか窓枠部分が厚く、視界はあまり開けていない

 ロープウェイの要領で景観を楽しめるものと期待したが、視界は開けておらず、あくまで居住者の生活のために設置されたものなのだと合点する。

バブル期のニュータウンは今なお現役

 エレベーターのホールを出てすぐに、なにか別の世界に来てしまったような感覚に襲われた。同時期に建てられたと思しき戸建て住宅が、見渡す限り建ち並んでいるのだ。違和感はおそらく、どれも同じくらいの高さの建物であるという、その同質性に由来しているように思われる。

エレベーターを上った先には大規模な分譲住宅地が

 すなわち駅からの直結通路の先にあったのは、団地ではなく、大規模分譲地だったのである。調べると、この分譲住宅地「コモアしおつ」はバブル期に開発されたニュータウンであって、東京西部、あるいは反対方面の甲府や大月などにアクセスのよい高級住宅街として開かれたものらしい。

エレベーターホールに展示される四方津駅~コモアブリッジの建築模型

 朝の通勤時間帯における乗車時間は八王子駅までで30分弱、新宿駅までで70分強であり、中央線沿いを勤務地とする人たちのベッドタウンとしては確かに合理的な選択肢なのかもしれない。上野原市の2015年のデータによれば、同市からの通勤・通学先として、八王子と立川が約30%を占めるほか、23区内が13.6%あり、都内への通勤・通学者は計60%を超える。