「二軍で結果出していないのに」筒香一軍昇格に賛否両論
ベイスターズ入団が決定しても、まだどこか信じられなかった。ハマスタで行われた雨の入団会見にも出向いた。復帰の思いを口にする筒香をカッパを着ながら眺めていた。でも「あ、え、かわいい」という当たり前の感情しか出てこない。
本当に筒香はベイスターズに帰ってくるの? 帰ってきたの? ファームで青い練習着をまといバッティング練習をする筒香を見ても、同期である加賀繁スコアラーと談笑する筒香を見ても、「あ、筒香さん……」とチラチラ横目でみているルーキーと一緒にトンボかけてる筒香を見ても、まるで実感が湧かなかった。
「ママ、筒香、5月6日のヤクルト戦で一軍昇格じゃん!」
呆ける母親の目を覚まさせようとしたのだろう、長男が喜びいさんでLINEをくれた。でも知ってました。ママがどんな頻度でエゴサならぬ筒サしていると思っているの、でもありがとう。そしてそんなハイパー筒サによって、この昇格がかなり賛否両論を呼んでいることも知っている。
ハマスタに筒香がやってくることを喜ぶ人がいる一方で、「二軍で結果出していないのに、時期尚早じゃないか」「せっかく若手がチャンスを掴みだしているのに」と否定的な意見も多かった。賛にも頷き、否にも頷く。「興行優先の客寄せパンダだな」という意見には、「確かに筒香はパンダ並みにかわいいが」とも思った。5年の月日は、私から「いやいや筒香だよ、いけるっしょ」という謎の自信を奪っていた。
「昨日の筒香と今日の筒香は違う」と長男
ひとり身勝手な不安に苛まれる母親に、長男は笑って言った。
「昨日の筒香と今日の筒香は違うし、二軍の筒香と一軍の筒香は違うよ」「大丈夫、やってみないとわかんないじゃん」
そして「俺も見たかったなぁ~」と言いながら能天気に笑ってバイトに向かった。あの日、2019年のCSファーストステージ第3戦、雨の中でみた最後の筒香。私の隣で泣いていた中学生の長男ももう大学生になっていた。
5月6日。川崎から京浜東北線に揺られてハマスタに向かう。鶴見、新子安、東神奈川……5年の距離が一駅ごとに縮まっていく。筒香のユニフォームを着た人がひとり、またひとりと乗り込んでくる。野球は楽しいはずなのに、この日の筒香ユニの人々は皆、何かの裁きを受けにいくような面持ちに見えた。これから私たちは筒香を見に行くのだ。