そこで自分のカメラも渡して確認してもらい、まあ本当に猫しか写ってないわけで、それを見た警察の人も「こいつはガチやな」と思ったのか、「大変なお仕事ですね」と帰っていきました。最近はそういうことも減りましたが、あれはまだ写真家になってすぐくらいだったので、今よりも猫を撮る人が少なかったのかもしれませんね。
写真が世の中にあふれる時代の「つまずきやすいこと」
――猫だけでなく、写真を撮ってSNSにアップしている人が今は本当にたくさんいます。世の中にこれだけ写真があふれるようになった今、「つまずきやすいポイント」って何でしょうか。
沖 やっぱり他の人の写真と比べてしまうことじゃないですかね。人より劣っているところばかり見てしまって、それが積もり積もっちゃうと、「もう写真はいいかな」と思っちゃいがちですよね。
今だと特に、「いいね」がもらえないことで消極的になりやすいと思うんです。つまずくところってそういうところなんじゃないかな。
――沖さんは「いいね」の差でつまずくことはなかったですか。
沖 僕はなかったんですよね。もともと会社のためのインスタグラムに勝手に猫の写真を上げ始めたのがきっかけでしたし(笑)、一人でも喜んでくれたらいいなっていう、それが僕にとってはゴールだったんですよね。
一時期、写真家のテラウチマサトさんのカメラ教室に通っていたんですけど、そのときに本を出せることになりました、と報告したら、「出版に携わった人みんなが、これは自分の本だと思うような、独りよがりじゃない本を作ってね」と言われたんです。
そのときは「何言ってんやこの人」と思ったけど(笑)、テラウチさんは「誰かに喜んでもらうもの」を作るために努力し続ける大切さを教えてくれていたのかな、と思います。思い返せば、前に勤めていた婦人服屋さんの社長もそういう人なんですよね。
とはいえ自分も、そんな人たちから継続する意味を教えてもらったからちょっと変われただけで。それこそずっと、「小さいゴールに何の意味があるわけ?」とかって、何にでも楯突くような人間でしたから(笑)。
――努力をしても変えられない、しんどいことはありませんか。