「総理は早く結論を出して(4月8日からの)訪米にそなえたい気持ちが強かったのでしょう。だから、私にも真実を確認するためにやむをえず電話をかけてきて、それで済んだ、という形をつくろうとしたのだと思います」
ただ、森元首相は一連の裏金問題について岸田首相と電話で話したのは、この一回だけではなかったとも証言している。
「岸田総理も、私の関与がなかったことについては、だいたい分かっているんです。電話があったのは訪米前が初めてではありません。私に聞けと野党が騒ぎ始める前から、総理には『私の会長時代には、派閥ぐるみの裏金作りなどありませんでした。それは私がいちばんよく知っています』と話してきました」
実際、岸田首相は5月10日、記者団にこう語っている。
「聴取を行ったが、森氏の具体的な関与は確認できていないと申し上げてきた。この発言はまったく変わらない」
だが、その聴取の実態は、安倍派の裏金問題の真相に迫ろうとするものではなかった。首相自らによる異例の「事情聴取」も、期待していた国民にしてみれば、まったく拍子抜けするものだったとしか言いようがない。
「強いてお目にかかることはありません」
加えて、岸田首相は国会で、事情聴取が対面ではなく電話になった理由について「日程の都合で直接会うことはできませんでした」と説明してきた。だが、森元首相によれば、岸田首相からは「強いてお目にかかることはありません」とも言われていたという。
「総理はこう言っていました。
『私から森先生に電話した事実を言わなければならない事態になれば、それを公表させていただきます。それまでは、私から電話があったことをおっしゃらないでください』
私は『承知しました』とだけ答えました。あとは『ご体調はいかがですか』とか『強いてお目にかかることはありません』というようなことを言われました」
10日夜の岸田首相の官邸での弁明は、窮地に追い込まれた末の言い訳でしかない。
240分にわたってインタビューに応じた記事「森喜朗元首相『裏金問題』真相を語る」は、5月10日発売の「文藝春秋」6月号及び「文藝春秋 電子版」で公開中だ。森元首相は、自身が清和政策研究会の会長を務めていた頃に始まったとされる裏金作りについて詳細に語っている。
さらに、昨年7月、清和研の会長になることを望んだ下村博文元文科相から、2000万円の入った紙袋を持参された際のやり取りの詳細や、今年1月、塩谷立元座長に対して、「(裏金問題の)全責任を取って仲間を救ってやれ」などと説得したことについても明かしている。
森喜朗元首相「裏金問題」真相を語る 240分