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「ネズミにかじられ、眼球はむき出し」「死後時間が経過して顔が真っ黒」…現役納棺師(26)が明かす“遺体修復”現場のリアル

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宮本千秋インタビュー #1

2024/05/21
note

体液が漏れている遺体の場合…

宮本 ご遺体によって状態がまったく異なるので一概には言えませんが、例えば、身体からの出血が止まっていなかったり、体液が漏れている場合は、吸水性のあるシートで処置をしたり、お顔が腫れ上がっていたり、欠損している場合には、もとの状態に近づけたりですかね。

ーーもとの状態に近づけるというと、特殊メイクのようなイメージでしょうか。

宮本 はい。ただし、遺体修復の場合、特殊メイク以上にどのように遺体を修復するか、どのような材料を用いるのかが術者によって違って、正解と呼べるものがないのが現状です。

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 一般的には特殊メイク用のワックスや粘土などを使用するのだと思いますが、私の場合、「エピテーゼ」という技術を使うことが多いでしょうか。

作業の様子 

 私が知っている従来のマテリアルに比べて発色が豊かなことと、人体に近い質感なので、修復後のご遺体に違和感なく触っていただけるのが大きな理由です。

ーーエピテーゼというと、事故や病気であったり、先天的に欠損した身体を補うシリコーンで、生きている人間に用いられることが一般的だと思うのですが、ご遺体に対しても使われるんですね。

宮本 はい。とはいえ、遺体修復におけるエピテーゼはまだまだ普及していないように思います。そもそも、遺体修復に限らず、エピテーゼ自体がまだまだ浸透しきっていないですからね。

 

ーー宮本さんはどのようにエピテーゼという技術を知ったのですか?

宮本 2023年に共通の知り合いを介して、ヒューマンアートスクール代表の牧野エミ先生と知り合ったのがきっかけです。

 牧野先生は、UCLAでも学んだエピテーゼ技術における日本のトップランナーで、身体欠損をした患者さんの補綴をたくさん手掛けています。それだけでなく、すでにご遺体の修復をエピテーゼで行った経験をお持ちでした。自らの勉強のため、社費ではなく85万円くらいのコースを受講して、勉強させてもらったんです。

――学ばれた技術を活かした修復のなかで、印象に残っている処置について聞かせてください。