人の死と向き合い、故人の尊厳、そして遺された人の想いに寄り添う――。
亡くなった方が美しい姿で遺族とお別れできるよう、業界内でも珍しいエピテーゼという技法を用いて遺体修復を行う納棺師の宮本千秋氏(26)。人手不足が加速する葬儀業界に若くして飛び込み、今もその道を究めようとし続ける原動力に迫る。
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高校卒業後、ネットで求人を検索して“納棺師”に
――宮本さんは高校卒業後、すぐに納棺師になられたのでしょうか?
宮本千秋(以下、宮本) 幼い頃から絵画が好きで、高校は総合芸術を学ぶことができる学校で日本画を専攻していたんです。高校を卒業してからは美術館で働きながら展覧会に出すための絵などを描いていました。
ーーそこから納棺師として就職するとは大きな転換ですね。
宮本 はっきりとしたきっかけはないんですが、納棺師になったのは19歳の頃で、「納棺師 求人」と検索して、条件に合うものを選んだ記憶があります。
ーー他にもさまざまな職業があるなか、「納棺師 求人」と検索されたんですか?
宮本 はい。昔から死という現象に深い興味があって、納棺師という職業に惹かれたのだと思います。
日本は、死を穢れとして忌み嫌う風潮が強くあるように感じますが、私は幼い頃から、どうしてもそのような感覚が持てなかったんですよね。道端で死んでいる昆虫や動物を観察して、死とはどういうものかを考えたりする時間が多い子供で、当時から今に至るまで、生命は尊く、死も同様に神聖なものだと感じています。
――先ほどおっしゃられていたように、日本では死を穢れとして忌み嫌う風潮があると思いますが、そうなると納棺師という職業をご両親から反対されることもありそうです。
宮本 納棺師になることは母には伝えましたが、特段の反対はなく、「いいんじゃない」と言っていたように思います。
父は昔から何でも私のやることに反対したがる人なので、直接言うことはありませんでした。納棺師になったことを知ってからも賛成はしていませんでした。中学生くらいのときも、私はムンク展などに魅了されていましたが、父は風景画などのさわやかな絵を好んでいましたし、そもそも父とは昔から好みが合わないのかもしれません(笑)。
――就職後はどのように仕事を覚えていくものなのでしょうか?