死者を“お見送り”する現場には、さまざまな人々が介在する。なかでも、よく知られるのは映画『おくりびと』で有名になった納棺師だろうか。
 
 故人の体を清め、服を替え、化粧をほどこし、棺に納める……。故人が美しい姿で遺族とお別れをするための準備が主な仕事だ。

 しかし、事故や自死、孤独死など、「最期のあり方」によっては、遺体が損傷している場合もある。そんなとき、“遺体修復”を行う納棺師もいるのだとか。ここでは、株式会社四季清に勤める納棺師で、自身も遺体修復の技術を研鑽し続ける宮本千秋氏(26)の話を聞く。

宮本千秋氏

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火葬する“遺体”を“修復”するワケ

――納棺師という仕事は具体的にどのようなことをされているんでしょうか? 

宮本千秋(以下、宮本) 一言で言えば火葬されるまでの準備ですね。ご遺体を裸にして、衣類を着せ、死化粧をするのが一般的な流れでしょうか。故人を棺に収めるまで必要な身繕い全般を担っています。

――亡くなった状態は人によってさまざまでしょうから、個別具体的な対応が必要になりますよね。宮本さんは“遺体修復”も行う納棺師とのことですが。

宮本 はい。交通事故で亡くなっていたり、孤独死をしていたりして、お顔やお身体の修復などが必要になってくる場合は大変といいますか……。遺体修復をさせていただく場合があります。

ーー一般的に、ご遺体の損傷が激しい場合は必ず遺体修復が行われるものなのでしょうか?

宮本 遺体修復の技術は地域偏在が大きいんですよね。なので、地域によっては、対面させることなく、すぐに火葬されることも珍しくないように感じます。

 

ーーそのような中、宮本さんが遺体修復の技術を学び、処置し続けているのはなぜなのでしょう?

宮本 葬儀は、故人がご遺族やご友人とお別れをする最後のお顔になるじゃないですか。遺体が損傷しているからといって、対面なく火葬になるよりは、しっかりとお顔を見たうえでお見送りをした方が後悔が少ないというのが一番の考えです。

 故人の尊厳を守りながら、送り出す側のご遺族が見慣れたお姿に戻して差し上げたいんですよね。

ーー遺体修復と耳にしても、なかなか想像がつかないのですが、実際には、どのような処置を行うのですか?