1ページ目から読む
2/3ページ目

バンクーバーで“自我が芽生えた”

――8カ月カナダで過ごして、価値観などは変わったところはありましたか。

穂志 結構変わったと思いますね。何というか、この年齢だと変な表現ですけれど、“自我が芽生えた”というか(笑)。

 カナダにも色んな方がいるので一概には言えないですけれど、周りの目が気になるとか、周りがこうだからみたいな理由で行動する人は日本よりもだいぶ少ない印象で。みんな自分のスタイル、生き方を確立しているように見えました。それまでの自分は、気が強い面もあるのに、他人の目を気にして自分がしたいことができないみたいなことがあったんですけれど。8カ月の滞在で「自分の人生の舵は自分で取る」という意識みたいなものは芽生えましたかね。

ADVERTISEMENT

――カナダの価値観が穂志さんに合っていたんですね。

穂志 向こうは撮影現場でもすごく快適でした。私は人を立てたり立てられたりするのが苦手だったんですけれど、バンクーバーでは役者だからすごく立てられるみたいなのもなかったですし、監督だから気を遣うみたいなことも多分なくて。その人の役職にかかわらず、より良いシーンを目指す上でのフラットな会話や、人として向き合っている感覚。それは私にフィットしたと思いますね。

©杉山拓也/文藝春秋

日本が恋しかったところ

――日本が恋しくなるタイミングはなかったのでしょうか。

穂志 やっぱりご飯は恋しかったですね。バンクーバーには本当にどの料理もあって、ジャパニーズレストランとか居酒屋のような店もあったんですけれど。でも向こうの方たちの舌に合わないものは売っていないので、品数はあまり多くなくて。シンプルなごく普通のおつまみみたいなものが結構恋しかったですね。日本に帰って、すぐに倉(悠貴)くん(吉井長門役)と普通の居酒屋に行ったのを覚えています。

 あとは猫に会いたくて仕方なかったです。カナダに行っているあいだは、実家に預けた猫とビデオ通話とかしかできなくて。8カ月会っていないと忘れられてるんじゃないかと不安だったんですけれど、会ったらすぐに気づいてくれて、忘れられていなくてよかった。本当に猫に会えて嬉しかったですね。