先月最終話を迎え、世界中で大ヒットを記録している「SHOGUN 将軍」(日本ではディズニープラスの「スター」にて配信中)。

 主演の真田広之がプロデュースにも加わり、ハリウッドの製作陣が壮大なスケールで描いた本ドラマ。ジェームズ・クラベルのベストセラーを原作に、徳川家康や三浦按針ことウィリアム・アダムスといった日本史上の人物にインスパイアされた登場人物が、関ヶ原の戦い前夜をモチーフにした権謀術数の渦巻く時代を生きる物語だ。

 戦乱の時代に翻弄され、日本に漂着したイギリス人航海士ジョン・ブラックソーン(演:コズモ・ジャーヴィス)の妻となる女性・宇佐見藤を演じ、その演技力で海外からも熱い注目を集める女優・穂志もえかに、撮影現場の舞台裏や印象的なシーンなどについて話を聞いた。(全3回の2回目/1回目3回目を読む)

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最初の撮影で思わぬハプニングが

――バンクーバーの撮影現場で一番大変だった出来事を教えていただけますか。

穂志 最初の撮影ですごくバタバタしたのが大変でしたね。私、危うく全然違う髪型になりそうだったんですよ。

 撮影が始まる前に、かつら合わせがあって。その時に、日本からスーパーバイザーとして来てくださった高嵜(光代)さんやカナダのヘアチームのチーフを含めたメンバーが確認して「よし、これで行こう」と髪型が決まったんです。

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 でも、撮影開始の当日、担当の方にしていただいた髪型が違ったんです。私が「ヘアフィッティングの時と違うみたい」って伝えたら、ランチ後に直すよって言われて、それでオッケーって思って待っていたらADさんに「もう撮影行くよ」って言われて。

「え! 髪型が違うよ」ってなって、急いで高嵜さんにも来ていただいたんですが、すぐに髪型ができるわけではなく。他のスタッフさんたちからしたら、私たちが何をやっているか分からないまま待たされているから、フラストレーションもたまってしまっていて。「これ以上かかるなら今日はもう撮影はできない」と言われたのを覚えています。

 凄い勢いで鬘を直してもらいながら、その時は通訳さんを通してですけど、一から事情を説明して「これは必要なことなんだ」と必死に伝えました。誰かが代わりに説明してくれたり、全部を察してもらえたりするわけじゃない。自分にとって大事なことは、俳優がきちんと主張をしなきゃいけないっていうのを感じましたね。

――いきなりの試練でしたね。

穂志 もうバタバタしていて、髪型が出来上がった瞬間にセットに連れていかれて。最初に撮ったのは、第1話の藤が赤ちゃんを抱えて自害しようとしているシーンなんですけれど。とにかく時間がなかったので、落ち着く間もないまま赤ちゃんを渡されて。

 私、カメラが回っているのかリハーサルなのか分かんなくて、鞠子役のアンナ・サワイに「これ本番? カメラ回ってる?」って聞いたら「うん」って頷くから、そこでどうにか自分の中でスイッチを入れて、演じ切ったっていうのがあのシーンです。