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――あのシーンがそんな状況で撮られたものだとは思いませんでした。

穂志 しっかり事前に準備していたので、悔いが残る演技にならなかったのは良かったです。いい経験とは言い切れない部分もありますけど、そんな状況でもやり切れたことは、役者としての自信に繋がったかもしれません。

一番印象的な“初めて2人きりになったシーン”

――穂志さんが演じた中で、一番印象的なシーンはどの場面でしょうか。

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穂志 どれも大切なシーンですけれど、最終話(10話)が印象的ですね。

 ネタバレになってしまうんですけれど、藤が按針に尼になることを告げるシーンがあり、そこで藤が「Yes, 尼」と一言だけ英語を話しますが、あのYesは私のアドリブでした。ブラックソーン役のコズモの自由なお芝居に影響を受けて、トライしてみたら、監督のフレッド(・トーイ)が気に入ってくれて採用になりました。

©2024 Disney and its related entities Courtesy of FX Networks

 あとはやっぱり私にとってのラストシーンですね。藤とブラックソーンが一緒に舟に乗って、湖に前の夫と息子の遺骨を散骨する。散骨という文化を藤がブラックソーンに教えてもらって、ブラックソーンも鞠子の十字架を湖に収めて、舟の上で一緒に泣く。

 このシーンは、私たち2人だけが小舟に乗って、離れた別の船から撮影するという形でした。撮影の時に舟の下からどんどん水が入ってきて、着物の裾は膝くらいまでびしょ濡れになり、沈没するんじゃないかと不安になったり(笑)。そういうところも記憶に残っていますね。他にも話せば色々面白エピソードがあるシーンなのですが。

 でも、このシーンが印象的な一番の理由は、そこで初めてコズモと私が完全に二人きりになったからなんです。それまでは夫婦役とはいえ常にスタッフが周りにいましたけれど、このシーンは舟に乗っているのは私たちだけで、他には誰もいなかったので、あれは貴重な時間だったというか、良かったなと思っています。