コンピューターを動かすには出入力、記憶、通信といった基本機能を担うオペレーティング・システム(OS=基本ソフト)が必要だ。アンディ・ルービンが開発したのはスマホ用OSの「アンドロイド」。独自の「iOS」を使う「iPhone」を除く、世界中のほとんどのスマホにはアンドロイドが採用されている。つまり、パソコンOSにおける「Windows」と同じデファクト・スタンダード(事実上の業界標準)であり、今やパソコンよりスマホの利用者が多いため、「世界で最も多く使われているOS」と言える。要するにルービンは「スマホ時代のビル・ゲイツ」だ。

 ルービンは1963年、米ニューヨーク州のチャパクアで生まれ育った。父親は心理学者で後にダイレクト・マーケティングの会社を興した。ルービンはユーティカ大学でコンピューター・サイエンスを学んだ後、ドイツの光学機器メーカー、カールツァイスに入社し、1989年アップルに移籍。翌年、アップルが日本の電機大手らと組んで設立したゼネラル・マジックに移り、携帯端末OSの開発に携わる。秋葉原のような電気街で部品を漁ってロボットを作るのが大好きだったため、アップル時代、同僚から「アンドロイド」と呼ばれていた。

 99年、スマホメーカーのデンジャーを設立。2003年には数人のメンバーとともに、カリフォルニア州パロアルトにスマホOS開発を目的とするアンドロイドを設立した。ルービンは「誰でも使えるスマホ用OSを開発し、メーカーに無償提供する」というアイデアを世界の携帯メーカーに働きかけた。このアイデアと技術力を評価した(または脅威に感じた)グーグルは2005年にアンドロイドを買収、ルービンはグーグルの技術担当副社長に就任した。

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アンディ・ルービン(アンドロイド創業者) ©getty

 グーグル時代のルービンは、本社と自宅の間にガレージ代わりの一軒家を借り、仕事が終わると一目散でこの家に引きこもり、ロボットの自作に没頭したロボットオタク。技術の先を見極める力を持ち、決断力に富み、リーダーシップもあった。

 こんな逸話がある。日本に二足歩行のロボットを開発している「シャフト」という東大発ベンチャーがある。2012年頃、二足歩行ロボットの開発に目処をつけたシャフトは次のステップに進むための資金を求めて産業革新機構の門を叩いた。だが経産省出身の同機構幹部は「せっかく東大を出たんだからパナソニックでも日立製作所でも大手に入ってやり直せ」と説教した上、追い返した。