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〈取り壊しの危機も〉“世田谷イチ古い洋館”の保存が実現できたワケ「名立たるレジェンド漫画家たちが立ち上がり…」

世田谷区豪徳寺の「旧尾崎テオドラ邸」

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, アート

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 閑静な住宅街でひときわ目立つ水色の洋館。東京・世田谷にある「旧尾崎テオドラ邸」は明治中期に建てられた歴史ある邸宅だ。一時は解体の危機にあったが、この洋館に惚れ込んだ漫画家・山下和美ら、レジェンド漫画家たちが尽力し、保存を実現。

 現在発売中の『週刊文春エンタ+』では、この洋館を救った山下和美&笹生奈実両先生のインタビューと、魔夜峰央の娘・山田マリエによる館ルポマンガも掲載! ここでは写真とともに「旧尾崎テオドラ邸」のこれまでを紹介する。

旧尾崎テオドラ邸

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“世田谷イチ古い洋館”が取り壊しの危機に

 新たなマンガ文化の発信地となった同館をご案内しよう!

 世田谷区豪徳寺に静かに佇む洋館「旧尾崎テオドラ邸」。住宅街に現れる、特徴ある水色の建物は、明治21年(1888年)に、英国生まれの娘・テオドラのため、父親の尾崎三良男爵が建て、昭和8年(1933年)に麻布から移築されたと言われる。テオドラは、「憲政の神様」とも評される第2代東京市長の尾崎行雄の妻。この洋館は、136年もの間、東京の歴史を見守ってきたのだ。

 しかし、そんな“世田谷イチ古い洋館”が2019年に取り壊しの危機に! 老朽化もあり、解体もやむなし……といった絶体絶命の状況下で立ち上がったのが、『天才柳沢教授の生活』『ランド』などの人気作で知られる漫画家・山下和美らであった。

計画は、近隣の住民や行政も巻き込んだ一大プロジェクトに発展

「散歩のたびに眺めていた洋館が解体されると知り、いてもたってもいられなくて」と当時の心境を語る山下。突き動かされるように「旧尾崎邸保存プロジェクト」を発足。

 

 計画は、近隣の住民や行政までを巻き込んだ一大プロジェクトに発展。SNSでも拡散され、賛同者を集めてクラウドファンディングも実施された。山下は、この一連の動きをマンガ『世田谷イチ古い洋館の家主になる』として連載。作中では、不動産業者や工務店との、緊張感はしる交渉の様子まで描かれている。