実家に戻ってもギャンブルをやめられなかった
「店は24時間営業だったから、仕事終わりに行って朝までポーカーやって、寝ずに仕事へ行くこともありました。その頃から金が足りなくなって、サラ金から借りるようになってましたね」
借金ばかりが増えていき、手を出した消費者金融は4社、5社と増えていったという。
「カードローンも合わせたら最終的に7社ぐらい借りたのかな。借金返済のために別の会社からまたお金を借りて……と繰り返して、借金総額は300万円以上ありました。月々の支払いは20万円以上。催促の電話はじゃんじゃんかかってくるし、一人暮らししていたアパートは家賃滞納で追い出されて、実家に戻りました。それでもギャンブル通いはやめられなかった。完全におかしくなってましたね」
そんなどん底状態の中村さんに救いの手が伸びる。窮状を見かねた知人が借金を全額立て替えて、代わりに返済してくれたのだ。
「『もうギャンブルをやらない』という約束で300万、快く貸してくれたんです。無利子で、善意でね。それで借金は全額返済できました。ギャンブルも1カ月ぐらいは我慢したんですよ。でも300万円返済できたから、与信枠が広がってまた300万円ポンと借りられちゃうんですよ。
それで懲りもせず、またサラ金からお金を借りてギャンブルに通うようになってしまった。毎月知人には数万円ずつ返済する約束だったんですが、それもすぐに滞ってしまいました」
「絶対に使っちゃいけない金でやるほうが面白い」
中村さんは、大谷選手のお金に手を出した水原一平氏の「気持ちが分かる」と話す。
「ギャンブルって絶対に使っちゃいけない金でやるほうが、面白いんですよ。背徳感がたまらない。だから正直、もう一生ギャンブルしないと知人に約束した後にそれを裏切ってやっていたギャンブルのほうが興奮したんですよね」
結局中村さんはその後、再度ポーカー屋に通っていることが知人にばれた。自己破産まで考えたものの、弁護士に任意整理を頼み、借金は地道に返済することができたという。
「その頃ちょうどポーカー屋が一斉に摘発されていて、通っていたお店もなくなっちゃったんです。だから強制的にギャンブルもやめられて、僕にとってはラッキーでした。お金を貸してくれた知人には相当怒られましたけどね」
ハマった本人だけでなく周囲の人まで人生を狂わされることになるのが、ギャンブルの恐ろしいところだ。