ギャンブル依存症は意志や根性ではどうにもならない、治療すべき病気である――。

 そう語るのは、「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表理事である田中紀子さんだ。田中さんは祖父、父、夫のギャンブルと借金に振り回される人生を送り、自分もまたギャンブル依存症になってしまった過去がある。

 ここでは、ギャンブル依存症が引き金となった事件をまとめた田中さんの著作『ギャンブル依存症』(2015年刊行、角川新書)から一部を抜粋して紹介する。カジノがない国であるにも関わらず、「ギャンブル大国」となっている日本の実態とは――。(全2回の1回目/続きを読む

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20人に1人がギャンブル依存症の日本人

「病的ギャンブラー」は全国に536万人いると推計される──。

 2014年8月に厚生労働省研究班の調査結果として発表された数字は、折りしもカジノ建設議論と重なり社会の耳目を集めました。

 この数字は、前年(13年)に無作為抽出した成人4153人に対する面接調査の結果から割り出されたものです。

「やめられないと分かっていてもギャンブルをやめたいと思ったことがある」「ギャンブルをしていることを配偶者などに隠したことがある」など20項目の質問をして、5項目以上に該当した場合、病的ギャンブラーと判断しています。この基準は国際的なものです。

©AFLO

 その結果、男性の8.7%、女性の1.8%が該当したことから全国536万人という数字が割り出されたわけです。成人全体では国民の4.8%にあたるので、およそ20人に1人になります。

 実は厚労省では5年に一度、この調査を行なっています。前回08年に行なった調査に関しては社会の関心がほとんどなく、マスコミに取り上げられることもありませんでしたが、このときは推計559万人となっていました。今回と極端な違いはありませんでした。

 この数字が多いのか少ないのかといえば、「衝撃的なほど多い」といえます。

 諸外国でも同様の調査は行なわれています。たとえばアメリカ・ルイジアナ州の02年調査では1.58%(アメリカ全体で1.40%というもう少し前の調査結果もあります)、フランスの08年調査が1.24%、韓国の06年調査が0.8%、スイスの08年調査が0.5%などとなっています。

 ルイジアナ州、フランス、韓国にはカジノもありますが、それでもこの程度の数字です。世界的に見れば、病的ギャンブラーの割合は100人に1人程度の国が多いといえます。それに対して日本は20人に1人ということなのですから、やはり異常です。