平均負債額は595万円!
病的ギャンブラーは、ギャンブル依存症者とも言い換えられます。
依存症というのは、単なるギャンブル好きとは意味が違います。
「やめよう」という意志があってもやめられない人たちのことです。
「病的といっても、程度がしれているのではないか」と思われる人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
たとえば、精神科医の森山成彬先生が2008年に発表した「病的賭博者100人の臨床的実態」という論文があります。その中にある臨床的実態調査を見れば、事態の深刻さがわかりやすいはずです。
森山先生は、福岡県でメンタルクリニックを開業されている方です。帚木蓬生というペンネームで『閉鎖病棟』などの小説を書かれていることでも知られています。ギャンブル依存症に関しても、この分野の第一人者。そのため、05年8月にクリニックを開設してからわずか2年間で、100人のギャンブル依存症患者(病的賭博者)を診られています。男性92人、女性8人だったそうです。
その100人のデータによれば、初診時の平均年齢は39.0歳で、ギャンブルを始めた平均年齢は20.2歳となっています。
平均27.8歳で借金を始め、初診までには平均1293万円をギャンブルに注ぎ込んでいます。平均負債額は595万円。100人のうち28人は自己破産を含めた債務整理をしていました。また、17人がうつ病、5人がアルコール依存症を併発させていて、本人だけでなく配偶者の15%もうつ病やパニック障害などで治療を受けていました。
こうした数字を見てみれば、娯楽の域をはるかに超えているのがわかります。
家計を崩壊させて、本人も家族も精神的なダメージを被ります。
それも短期間の「はしか」のようなものではありません。20歳くらいでギャンブルを始めてから7、8年かけて後戻りが利かないほどのめり込んでしまい、20年ほど抜け出せずにいるということです。
依存症の患者が自ら精神科の門を叩くものなのかという疑問を持たれる人もいるかもしれませんが、本人ではなく家族が先に相談に行く場合が多いものです。
ギャンブル依存症は、「治療すべき病気」
病的ギャンブラーあるいはギャンブル依存症というと、「どうしようもないギャンブル好き」というイメージを持たれるかと思いますが、実際には一般の人と同じように普通にギャンブルを楽しんでいたのに、自分でも気がつかないうちに、やめたくてもやめられないギャンブル依存症という病気を発症していたのです。
世界保健機関(WHO)では、ギャンブル依存症を「治療すべき病気」と位置づけています。人間性の問題に過ぎず、意志によってなんとかできると考えられがちですが、そうではありません。世間がそういう意識を持っていると、ギャンブル依存症者に対しては、ただ白い目が向けられがちになるので、正しい理解が広まってほしいと思っています。