大谷翔平選手の元通訳・水原一平氏による違法賭博で注目が集まった「ギャンブル依存症」。ギャンブルはなぜ人をおかしくさせるのか。ギャンブルで人生が狂った人たちの話を聞いた。
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ギャンブルとなるとアドレナリン全開に
「これまでギャンブルで破滅していくお客さんを、何百人も見てきました。なかでもひどかったのは、とあるメーカー系の老舗企業の会長だったAさんです。その方はうちの店で20億円ぐらい負けて、その時の借金を踏み倒そうとしたので、大揉めして裁判にもなりました」
ため息交じりにそう語るのは、かつて都内で裏カジノを経営していた高橋一也さん(仮名・56歳)。A会長との“泥沼裁判”に至るまでに一体何があったのか。
「A会長が、初めてうちの店を訪れたのは6年ほど前。82~83歳でしたが、ギャンブルのことになるとアドレナリンが出るのか、いつも目を輝かせていました」
上場企業の会長で、金も時間もあり、しかも生粋のギャンブル好き。上客になるだろうと高橋さんは期待を膨らませた。ところがA会長のギャンブルは、長年裏カジノ界隈にいた高橋さんでも驚くような遊び方だったという。
「毎回、信じられない大金を賭けるんですよ。会長がやるゲームはいつもバカラと決まっていて、最初は2000~3000万ぐらい。でも負けが込んでくると取り返そうとして大金を入れてくる。『次は5000万だ、1億円だ』とさらに金額を上げていって……。でも、ギャンブルセンスはまるでなくて、負け続けていました」
ハマらざるを得ない“暗黙のルール”や“圧力”
大金を賭けては負け、またそれを取り返そうとさらに大きな額を賭け、負債はあっという間に膨れ上がった。
「とはいえ仮に途中で勝てたとしても、ギャンブルにハマってしまった人はそこでやめません。じゃあもう1回いけるんじゃないか、という思考になりますから」
特に裏カジノのような大金が飛び交う世界では、ギャンブルにハマらざるを得ない独特の雰囲気があるのだという。
「店のマナーとして『最低70ゲームはやる』とか『お客さんが一周回るまでは続けなくちゃいけない』とか、ギャンブル店にも“暗黙のルール”があります」
店側や客同士の同調圧力によって作られた空気感によって、簡単には抜け出せなくなるのがギャンブルの恐ろしいところだ。A会長も例外ではなかった。