文春オンライン

“大谷フィーバー”の裏で日本人記者が失態…「岩によじ登って撮影し、排除された」大谷翔平ばかり追いかける日本メディアのリアル

『大谷翔平の社会学』より #2

2024/05/20
note

日本のメディアが日常的に異国の地でやっていた“無礼”

 プロスポーツの世界では、一部のスター選手に注目が集まるのは仕方のないことである。とはいえ「日本人記者に囲まれて、練習場で大谷の投球を打ったかと質問攻めにされている始末」だった無名のマイナーリーガーはいったい、どのように感じたのだろうか?

 もしかすると「どんな理由であれ注目されてラッキー」と思ったかもしれないが、マイナーリーガーといえどもプロ野球選手、プライドもあるだろう。取材を受けたにもかかわらず記者たちが自分に全く興味を持っていない、という状況は、あまり気持ちいいものではあるまい。

 僕が記者だったら、プロ野球選手に「ほかの選手」のことばかり質問するのは気が引ける。それは取材相手に対して失礼な行為だとすら感じてしまう。

ADVERTISEMENT

 でも、これこそ日本のメディアが日常的に、異国の地でやっていることなのだ。そして、それは個々の記者の問題ではなく、そういうことを当然としてきた日本のマスコミ界全体の問題だろう。自分たちが欲する情報やコメントを得るためには何をしてもかまわない、というメディアの傲慢さ、特権意識が垣間見える。

©文藝春秋

メディア関係者の行動が「日本人」の国際的な評価を貶めているかも

 異国の地でも「日本人村」を運営し、現地のルールではなくムラのルールに従って行動する。あまりにも自国中心的であり、身勝手だと感じざるを得ない。

 僕らが今日、大谷の活躍に一喜一憂できるのは、日本のメディア関係者が時に「岩によじ登って」でも大谷の一挙手一投足を追いかけ、その詳細を日々伝えてくれるからだ。メディアが伝える大谷の姿を見ていると、彼の存在が「日本人」の国際的な価値を高めてくれているようにさえ感じる。

 しかし、その舞台裏ではもしかすると、大谷を取り巻く日本のマスコミ関係者が白い目で見られているのかもしれない。最悪の場合、彼らの身勝手な行動が「日本人」の国際的な評価を貶めてさえいるかもしれない。

 国際社会に生きる僕らは、その可能性に対してもう少し意識的になってもいいのではないだろうか?

大谷翔平の社会学 (扶桑社新書)

大谷翔平の社会学 (扶桑社新書)

内野 宗治

扶桑社

2024年4月24日 発売

“大谷フィーバー”の裏で日本人記者が失態…「岩によじ登って撮影し、排除された」大谷翔平ばかり追いかける日本メディアのリアル

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー

関連記事