タイトルで受ける印象と違っていて、こんな番組だと思わなかったということが時々ある。『日本怪奇ルポルタージュ』もそんな番組のひとつで、いい意味で裏切られた。「怪奇」というとオカルト的不可思議なものを取り上げるのかと思いきや、1月1日に放送された特番では、教育虐待の果てに起きた親殺し事件や行旅死亡人(身元不明で、引き取り手が存在しない死者)問題など、シリアスな話題を取り上げ、正月から見るものを重い気持ちにさせた。なるほど、ホームページには「複雑怪奇な問題」に寄り添う、とある。
そんな番組が4月から期間限定でレギュラー化された。レギュラー化後もその路線は継続し、ZAZYが学生時代に受けていた父親からの教育虐待の話や、逃亡犯・桐島聡、イジメ問題など硬派な話題が続く。とりわけ心をえぐられたのが、5月2日に放送された平成ノブシコブシ・徳井健太の「ルポ散歩」。母親が重度の統合失調症を患ったため、中学1年生の頃から家事や妹の世話をしていた「ヤングケアラー」だったことが、彼独特の淡々とした語り口で明かされた。病気がはっきり表面化したのは、ある日、下校し帰宅したとき。母が窓の下に隠れ「隣の窓から私のこと見てる」と言っていた。典型的な妄想だ。しかし、そんな知識のない中学生。“コント”をやっているのかと思い、「ホントだ、見てる」と乗って付き合うと、その日以来、母は自分の部屋から一歩も出なくなってしまったという。今では患者の妄想を否定しないほうがいいとも言われているが、彼が負った自責の念と後悔の大きさは想像に難くない。
父は会社の「学業単身赴任」という制度を使って家を離れていたため不在。「働いてはくれてたんで、そこもなんとも思ってないですね。別にいらないっすね。求めてなかったんで」と無感情に振り返り、親に頼ったことがないため「いまだに誰かに頼るっていうのができないかもしれない」と語るのだ。「気がついたら当たり前のことだったので、大変だとは思ってない」「本能みたいなもので、責任感や愛があったわけではなくやってました」といった彼の言葉は、ヤングケアラーの多くに共通する感覚らしいことは、他のドキュメンタリーでも見て知識として知っていたが、彼のこれまでの言動や芸風から、それが決して強がりなどではないことがよくわかる。その状況を当たり前と捉え、周りに助けを求められないままパンクしてしまうヤングケアラー問題の深刻さをリアルに実感した。周りに「土足で踏み込む勇気と鍛錬」がある人がいなければ、「助けるのは不可能」と静かに語る徳井の言葉があまりにも重い。そして“土足で踏み込む”かのようなこの番組の意義を感じた。
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『日本怪奇ルポルタージュ』
テレビ東京 木 25:00~
https://www.tv-tokyo.co.jp/reportage/