杉咲花と若葉竜也。二人の名を目にして、心がときめいた『アンメット ある脳外科医の日記』だが、期待は満たされた。

 交通事故で脳に損傷を受け、この二年間の記憶を喪い、いまも一日で記憶が消えていく脳外科医、川内ミヤビを杉咲が演じる。

 彼女は早朝に目覚め、時計の裏に貼られたメモに従い、前夜に自分が書いた日記を丹念に読んでから、勤務先の病院に向かう。

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杉咲花 ©文藝春秋

 アメリカで腕を磨いた脳外科医、三瓶(さんぺい)友治(若葉竜也)が配属され、病院内に波乱が起きる。超高度な技術をもつ三瓶だが、仕事の虫で手術を何より優先させ、髪はボサボサ、服はヨレヨレでサンダル履きだ。

 ミヤビの主治医である関東医大の大迫教授(井浦新)は、後遺症を理由に彼女の医療行為を禁止、ミヤビは看護助手に専念している。

 脳梗塞の患者を治療、手術する際に、三瓶は看護師長の津幡(吉瀬美智子)が制止するのも無視し、ミヤビに手術の助手を任せる。

 それを知った大迫が三瓶とミヤビを叱責するが、三瓶は怯むことなく「だって、川内先生はオペも出来ますよ」とボソリ呟くだけ。

 そう、若葉竜也のボソリ静かな、教授の権威などクソ喰らえの顔つきと台詞まわしが格好いいんだよ。そして記憶障害を抱えても、いつも同僚や患者に優しくソバカスが印象的な笑顔で接するミヤビが健気だ。

 ていねいで、静かな演技をするの、この二人は。映画『市子』では三年間も同棲していた市子(杉咲)はプロポーズされた直後に姿を消した。恋人(若葉)にも打ち明けられない凄惨な過去が市子にはあった。戸籍もなく、保険証も持たず、病院にも行けない。市民社会の外で生きる少女を繊細に、リアルに杉咲は演じ、若葉はそんな彼女に優しく接した。

 市子には戸籍と保険証がなく、ミヤビには過去の記憶がないし、きょうの出来事も明日になれば消え、日記で確認するしかない。

 三瓶はここでもミヤビを支える。大迫は川内先生は後遺症も心配だし、手術に失敗したら心も傷つくと。しかし三瓶は大迫の激しい反応に不審を抱いたようだ。何かある。

 大迫が可愛がる脳外科医の綾野楓(岡山天音)と、その婚約者の麻衣(生田絵梨花)の祖父、西島秀雄(酒向芳)は地域医療グループのボスで、黒い利権の影がうごめく気配が。

 クールな三瓶先生が、ミヤビに綾野が医局の食堂でベタつくのを見て「俺、ぶっ飛ばしてきます。昨日、ロッキー見たんで大丈夫です」と無表情だけど熱くなったりして、楽しい。春ドラマのNo.1は決定だ。そうだ。「事故の前に僕たちは婚約してたんです。これは日記に書かないで」なんて泣かせる言葉もボソリ呟いていたな。

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『アンメット ある脳外科医の日記』
カンテレ・フジテレビ系 月 22:00~
https://www.ktv.jp/unmet/