現在放送中の「土曜ドラマ」『パーセント』(NHK総合)は、ローカルテレビ局「Pテレ」の局員・未来(伊藤万理華)が、「障害のある俳優を起用する」という局の方針に悩み、向き合いながら成長していく物語だ。未来が熱望して主演をオファーする車椅子の高校生・ハル役には、東京2020パラリンピック開会式で「片翼の小さな飛行機」を演じた和合由依を抜擢。他にも障害を持つ俳優を多数キャスティングして、作品自体と劇中ドラマの内容がシンクロしていることで話題だ。

未来(伊藤万理華)はハル(和合由依)の存在感に魅了され、ドラマへの出演を熱望する ©NHK

第1回のあらすじ
吉澤未来(みく)は自らが提案した学園ドラマの企画が採用されるが、局をあげた「多様性月間」というキャンペーンの一環として、「障害のある俳優を起用する」という条件で企画は進んでいく。やがて未来は車椅子に乗った女子高校生・宮島ハルと出会う。俳優を目指すハルに未来は不思議な魅力を感じ、出演のオファーをするが、ハルは「障害を利用されるのは嫌や」と拒否。諦めきれない未来は、ハルが所属する劇団「S」の稽古場を訪ねる。

 本作の企画を立ち上げたのは、NHK入局7年目の若手プロデューサー、南野彩子さん。主人公・未来とは年齢が近く、実際に南野P(プロデューサー)が『パーセント』を制作していく上で経た過程や葛藤が、ドラマのストーリーにも反映されているのだという。企画者である南野Pと、朝ドラ『マッサン』『カムカムエヴリバディ』の制作統括などを歴任し、本作の制作統括の一人である櫻井賢さんに、制作秘話を訊く。

はじめは出演に難色を示していたハルだったが…… ©NHK

『バリバラ』ディレクター時代に抱いた疑問

「多様性の重視」が叫ばれて久しい今、テレビドラマの作り手たちはどんな思いで「もの作り」をしているのだろうか。まずは企画の成り立ちから尋ねた。

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プロデューサー・南野彩子さん(以降、南野) 「私は2020~21年に『バリバラ』という障害者情報バラエティー番組のディレクターをやっていたのですが、その頃から『何で日本のドラマって、障害のある俳優さんがあまり出演していないんだろう』ということをずっと考えていました。その後ドラマ部に異動になって、とある作品で車椅子ユーザーの方からエキストラの応募があり、『あれ? 障害のある方をエキストラとしてお迎えできるんだっけ?』ということから悩んでしまったんです。『こうなったらいいのにな』って、言ってる分にはすごく簡単だけれど、実際に問題に直面したときに何もできない自分がすごく歯痒くて。そんなところを出発点に、このドラマの企画を出しました」