『バリバラ』も『パーセント』も、NHK大阪放送局が制作している。企画が通り、初めてドラマをプロデュースすることになった南野Pは、かつて助監督をつとめた大阪放送局制作の朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(2021年後期)の制作統括の一人であった櫻井賢さんと、同作のチーフ演出であった安達もじりさんという2人のベテランに声をかけ、制作統括としてのバックアップを依頼した。櫻井CP(チーフプロデューサー)が初めてこの企画を聞いたときの印象はどんなものだったのか。
逆に、こちらが壁を作っているのではないか
制作統括・櫻井賢さん(以降、櫻井) 「えらい企画を通してくれたもんだと、最初は思いました(笑)。でも、入局7年目の南野Pだからこそ、形にできたのだと思います。大きな挑戦になると思いましたし、今、このドラマを作る意義というものをすごく感じました。当事者にキャストとして入っていただくので、その方たちの『人生の苦しみ』の部分を掘り下げることで、傷つけてしまうことになりはしないか、ある程度の人数は健常者の俳優で補ったほうが良いのではないかなど、議論に議論を重ねました。でも、そこを恐れている時点で、僕らが壁を作っているのではないかと思い至ったんです。それで『とにかくいろんな人に会ってみよう』と、オーディションをやったことが全ての突破口になったかなと思います」
「オーディションでお会いしたいのは、俳優として活動をされている、障害や病気を有する方です」という文言が書かれた募集要項を各芸能事務所に配ると、100人を超える応募が集まったという。
南野 「お一人ずつとお話しさせていただいて驚いたのですが、これまで障害があることを理由に書類選考の時点で落とされてきたので『オーディションを受けられること自体が初めてで、本当に嬉しい』と多くの方がおっしゃっていました。こんなにもポジティブなエネルギーを持って、お芝居を心から愛して楽しんで、チャンスに向かって努力を積み重ねてきた方が、私たち制作者が知ろうとしてこなかっただけで、こんなにたくさんいらっしゃったのだという、大きな気づきがありました」
結果、和合由依をはじめとする俳優10名以上が選ばれ、障害のある役は全て当事者である俳優が演じることとなった。オーディションの段階では「主人公が障害のある俳優に出会う」という設定だけが決まっていて、その性別や年齢や障害の内容などは決めていなかったという。ハルをはじめとする障害者の役は、脚本を手がけた劇作家・大池容子さんとスタッフが、オーディションを経てキャラクターを練り上げていき、各俳優に当て書きした。