近年テレビ界は、テレビ東京の大森時生(『このテープもってないですか?』『SIX HACK』)、フジテレビの原田和実(『ここにタイトルを入力』『有吉弘行の脱法TV』)、テレビ朝日の小山テリハ(『イワクラと吉住の番組』)、日本テレビの南斉岬(『カワシマの穴』)、元TBSの大前プジョルジョ健太(『不夜城はなぜ回る』)など、20代~30代前半の若手ディレクターの活躍が目覚ましい。テレビプロデューサーの佐久間宣行は若い世代のテレビマンについて「テレビが明確に元気じゃなくなった時代にあえて入ってきた人たちだから根性が違う」(『あたらしいテレビ』2023年1月1日)と評していた。彼らが活躍できる要因のひとつに、見逃し配信の普及などで深夜枠が再び若手が挑戦する場になってきたことも挙げられるだろう。関西ローカルの『るてんのんてる』もそんな番組のひとつ。読売テレビの若手ディレクターが渾身の企画を放送するチャレンジ番組だ。
今回の企画は入社4年目、制作に配属されてわずか1年目という門田翼ディレクターによる企画「アンチXに会いたい」だ。SNS上にあふれる誹謗中傷コメント。どんな思いでそれを投稿しているのかを聞くために投稿者に会おうと奮闘する。ディレクターは番組公式アカウントを使って、誹謗中傷を繰り返している100個以上のアカウントに「突然のご連絡失礼いたします」「DMにてやり取り可能でしょうか?」とメッセージを送る。だが、やはりほとんどが無視。晒されたりブロックされたりしてしまう。依頼文言であふれた番組アカウントのフォロワーもわずか2週間足らずで500人以上減ってしまう事態に。それでもディレクターは執念で送り続ける。
そうしてついに顔出しNGながらも会ってくれる女性があらわれる。パートとして働いていたが現在休職中の30代。2014年頃からSNSを始めるが、何度もアカウントが凍結されているそう。小・中学生の時に小さないじめを受けていたが、高校の時にやり返し、自分が強くなったらいじめられないんだという体験をきっかけに攻撃的になったという。中傷のメッセージについて「フォロワーは0にして誰のタイムラインにも届かないようにしている」と“配慮”を口にするが、ディレクターは「でもこの方が自分の名前を検索したら出てくるじゃないですか?」と引き下がらない。「自分への劣等感、他人がすごく眩しく見える」と言う彼女に「投稿した後はそういう劣等感は消えてるんですか?」とさらに投げかける。
根気強く深層の奥に迫っていくのがスリリングで釘付けになる。その根性からは、まだテレビにも面白いものができるんだという気概があふれていた。
INFORMATIONアイコン
『るてんのんてる』
読売テレビ 金 24:30~
https://www.ytv.co.jp/rutennonteru/