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 痩せている人や皮膚が薄い人を担当するときは、気をつけていないとバリカンの刃で耳の裏の皮膚を巻き込んで切ってしまうことがある。稀にしか起こらない事故ではあるが、よりによって加藤相手にケアレスミスを犯してしまった。

 あっ、と思った瞬間にはもう遅かった。

ヤバい、終わった

 加藤はびくっと身体をよじり、表情を引き攣らせた。

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――ヤバい、終わった。

 私は一瞬で覚悟した。

 作業でミスをして死刑囚が暴れでもしたら、一発で調査・懲罰に飛ばされてしまう。そして一度でも飛ばされた人間は、基本的にはもう元の作業をさせてもらえることはない。さらに刑期に関しても、最短でシャバに出るという道は閉ざされてしまう。

 刈り長先生に訴えるか、この場で直接私に襲いかかってくるか――向こうの出方を見るために身構えたが、意外にも加藤は何のアクションも起こさなかった。

――あれ、見逃してくれたのか?

 幸い、垂れてくるほどの出血はなかったため、適宜血を拭き取りながら私は何事もなかったかのように作業を続けた。

 この件に関して加藤がなぜ、お咎めなしで済ませてくれたのか?