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ところが、統合を目の前にして、D銀行は多くの総合職行員の職位を引き上げていた。自行の行員が、統合後F銀行の行員よりも優位に立てるようにする“親心”だったのかもしれない。以前にも合併を経験していたD銀行は、合併未経験のF銀行より一枚上手であったということだろう。
つまり、準備期間から水面下では三行によるマウントの取り合いが始まっていた。社長は誰になるのか、役員の割合をどうするか、駅近くの支店ではどちらを残すのか……。
システムにも影響を与えた「マウントの取り合い」
マウントの取り合いは、システムの導入にあたっても行なわれた。統合時、人事権をD銀行が握ったことで、システムもD銀行のものに切り替えられる予定だと聞いた。それはF銀行のものよりずいぶんと遅れているシロモノだった。
われわれF銀行出身者は「いつかパンクするだろう」と案じていた。マウンㇳの取り合いが最悪の発足日を招いてしまった。
このシステム障害は、口座振替処理の遅れや二重引き落としなどを断続的に引き起こした。ようやく業務が正常化したのはその月の半ばであった。
M銀行の行員はみな、こんなことはもう二度とごめんだと思った。