他方、こうした論争で取り上げられる表現に不適切な性的まなざしを助長する長期的影響がなかったとしても、問題である可能性は存在します。ここで検討が必要になるのは、それをみた女性の心理的安全にもたらされる影響です。
なぜ女性のヌードポスターを貼ってはいけないのか
たとえば、かつての企業では職場に女性のヌードポスターが貼ってあることがありました。現在においてそれは厚生労働省の指針でも「環境型セクシュアルハラスメント」として避けるべき行動とされています。
そのようなポスターを職場に貼るのが好ましくないのは、そのポスターが職場にいる男性の性欲をかきたてるからというよりも、そこで女性が安心して働くのを難しくするからです。
性的なまなざしでみられることへの不安、あるいはそうしたまなざしによって不当に評価されてしまう不安がポスターによって喚起されるのであれば、それはやはりないほうが望ましいという判断になるでしょう。
ここで難しいのは、そのような不安を感じる度合いは人によって大きく異なるという点です。一人でも不安を覚える人がいれば掲示は許されないということになれば、あまりに多くのポスターの掲示が難しくなるでしょうし、かといって多数の女性が不安になるポスターをあえて職場に掲示するのも感心できる事態ではありません。
したがって、課題となるのは許容されるラインをどこに引くかを決めることなのですが、万人が納得できる線引きはおそらく存在しません。性的部分を強調する女性イラストを好む女性がいる一方で、そうしたイラストに不安でなくとも不快を感じる男性も存在します。
私のみるところ、職場のヌードポスターは好ましくないという点では多くの人が合意できるとは思いますが、では駅に掲示された胸部を強調する女性アニメキャラのポスターはどうでしょうか。そこでもう一つ考える必要が出てくるのが、「駅」という場所の性格です。次に、この問題について考えてみましょう。
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