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心理学博士がアドバイスする対処法

 そこで、この新人の受け止め方の歪みのおおもとになっているメタ認知の欠如と、その対処法について、以下のように説明した。

 このケースにみられるメタ認知の欠如は、メタ認知的モニタリングの欠如である。先輩たちにやり方が違うと注意されたり、望ましいやり方をアドバイスされたりしたとき、「自分のやり方を否定された」という点にばかり目を向けているが、「自分のやり方が間違っていた」という点に目を向けていない。やり方が間違っていなければ、注意されることもアドバイスされることもなかったはずだ。そこに気づいてもらう必要がある。

 その際、以下の3つの点についてしっかりと認識してもらうような対話をするのがよいだろう。

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学ぶ姿勢が欠如していると、自分が損をする

 第1に大切なのは、仕事のやり方と自分自身を切り離すことである。仕事のやり方が間違っていると指摘された場合、「仕事のやり方」は否定されても、「自分という人間」が否定されたわけではない。そのことを説明し、「仕事のやり方」と「自分という人間」を冷静に切り離して受け止めるように導く対話をする必要がある。

 第2に大切なのは、指摘したりアドバイスしたりするのは意地悪でなく親切であり、指摘せずアドバイスしない方が意地悪だということを説明し、納得してもらうことである。指摘やアドバイスがあれば間違ったやり方が改善され、正しいやり方で仕事ができるようになっていくが、指摘やアドバイスをしてもらえないと、いつまでも間違ったやり方を続けることになり、仕事ができるようにならず、お荷物社員になってしまう。そのことを理解してもらうような対話をする必要がある。

 第3に大切なのは、この事例のような受け止め方の歪みがみられるような場合、上から目線に過敏に反応するところにも問題があることに気づいてもらうことである。自分より仕事に慣れている人から注意されたりアドバイスされたりすると、「どうだ! こっちのほうがよく知ってるんだぞ!」と誇示された、あるいは「こんなことも知らないのか!」とバカにされた、いわばマウントしてきたと感じてしまう。

 それは、熟練者から学ぼうという姿勢が欠如しているということでもあり、それでは自分が損をする。そのことに気づき、熟練者から貪欲に学ぼうという気持ちになれれば、注意もアドバイスも自分の糧として利用し、仕事力を高めていくことができるはずである。そのことを理解してもらうような対話をする必要がある。