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さらには美しい筋肉を短期間でそぎ落とし、げっそり痩せて、病弱な兄を演じたのが「天皇の料理番」(2015年・TBS)。なにもそこまで、と思っていたら、今度は急激に増量して、映画『俺物語‼』に心優しき純朴な巨漢の主人公で登場。粘土細工のように体を自在に変形させたこの時期を「形状記憶合金期」とでも呼ぼうか。

肉体派俳優と呼ぼうとした矢先に、知性と教養も売り出すという八面六臂の活躍っぷり。世界遺産に詳しいというセルフプロデュースも成功し、世界遺産の本を出版、世界遺産番組でもナレーションも担当している。それが付け焼き刃でもなく、ビジネスマニアでもなく、ほとばしる情熱と饒舌で完璧に語り尽くすものだから、老若男女がとりこまれるわけよ。これが亮平の「インテリヘリテージ期」。

各省庁は亮平の声を採用したらいいのでは

最もしっくりくるのは正確無比な指示を出し、チームを率いるリーダー役。

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「彼岸島」(2013年・TBS系)では自らがうっかり封印を解いてしまった吸血鬼の征伐に、弟たちを巻き込みつつ立ち向かう役、「TOKYO MER」(2021年・TBS)では緊急救命医療のエキスパート役。とにかく声が通って、滑舌がよい。

滑舌の悪さはご愛敬、役者の持ち味とも言えるのだが、逆に滑舌のよさは天性の才能だけでなく、努力の裏打ちをも感じさせる。耳の遠い年寄りでも、たとえ3倍速にしても、鈴木亮平の声だけは聴きとれるという現象で、茶の間では大人気。というか、各省庁は緊急時のアナウンスに亮平の声を採用したらいいのではないかと思うくらい。

「西郷どん」(2018年・NHK)でも薩摩弁を武骨かつ流暢にこなして、大河主演を立派につとめあげた。これが亮平の「全世代・全周波数制覇期」。国民的人気と好感度を最大限に上げたあたりで、またトリッキーな方向へいくわけですよ、彼は。

映画『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)のムショあがりの極道・上林役は、そらもうヒィッと悲鳴を上げるレベルの凶暴さ。想像しうる限りの悪行三昧、同情の余地を1mmももたない悪役を怪演。「下剋上球児」(2023年・TBS)で教員資格を持たずに詐称したくらい、屁でもない罪じゃないかと思わせるほどの極悪人だった。