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「いい役者は気配を消せるんだな」

全裸→形状記憶→インテリ→リーダー→外道と、善も悪も裏も表も意表をついて、依頼に忠実に演じてきた彼が、長年の憧れで念願の冴羽獠になりきれたことを心から祝福して賞賛したい。

個人的な趣味で言えば、ちょっといけすかない狡猾な男を演じる亮平か、逆に自信もオーラもない怯えた男を演じる亮平がいいと思っている。「エルピス」(2022年・フジ系)で演じた抜け目ないテレビ局報道のエース記者・斎藤正一の役が、最高にセクシーだった。全裸じゃないのにセクシー。むかつくけどセクシー。これに同意してくれる女性がいることを願う。

逆に、映画『ひとよ』(2019年)で見せた怒りを内包する長男の役も印象的だ。肉体と知性で手にしてきた栄華をまったく感じさせず、うだつの上がらない長男を小さく見せることに成功している。ずん飯尾和樹を彷彿とさせ、「いい役者は気配を消せるんだな」と改めて思わせてくれた。

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演じる役を狭めず、方向性と可能性を伸展&拡張させてきた鈴木亮平が、今後どこへ向かっていくのか。日本を飛び出してほしい気持ちと、ドメスティック&ストイックに追求してほしい気持ちと、両方ある。

吉田 潮(よしだ・うしお)
ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。