木南がごんたくれの父親(大杉漣)に尽くす姿を心配し、しかも大杉と血のつながりがないと知った木南をなぐさめ、不倫相手の子を宿した木南と結婚を決意するっつう「男の鑑」みたいな善人だった。エリート臭も機械油臭もイケるクチ。
そもそも兵庫県出身の関西人なので、いろいろな部分で両刀使いなのだが、なにか突破口を模索しているような時期も。そう、ただのいいやつでは役者魂が満足しなかったのではないだろうか。
その名を世に知らしめたのは「ほぼ全裸」のアレ
主演に抜擢されるも準備期間の延長など、制作秘話や苦労話が多くの人によって語られているのが映画『変態仮面』(2013年)だ。
女性の下着を被ると超人的な力が生まれ、股間のみを隠したほぼ全裸姿で悪を成敗するヒーロー・変態仮面こと色丞狂介を熱演。その肉体の完成度の高さという外面だけでなく、自分が変態であることを認めたくない逡巡という内面も見事に演じきった。
特に、ニセ変態仮面(安田顕)と高層ビルの屋上で対峙したシーンは平成の映画史に名を刻んだ。おバカなコメディの中で、アイデンティティー確立の逡巡、アンビバレントの苦悶、己の所在を問う、どこか哲学的な場面でもあった。
のちに、「日曜日の初耳学」(TBS系)に出演したとき、林修のインタビューで「『変態仮面』は間違いなく代表作」と自ら断言もしていた記憶があるので、本人にとっても格別の思い入れがあったと推測する。
その翌年には映画『TOKYO TRIBE』でこれまたほぼ全裸の凶暴な男・メラを演じた(ま、役どころとしては非常にチンケな対抗心があって、鈴木亮平がもちうる知性をすべてかなぐり捨てるような設定でもあったのだが)。これが鈴木亮平の「うなぎのぼり全裸期」。
彫像のように美しく隆起させた筋肉に見惚れた男性も少なくない。女受けより男受けのする肉体改造論は、さらに進化を遂げていく。
肉体派→知性と教養も売り出す
「全裸期」で変態の称号を拝受後、間を置かずに朝ドラ「花子とアン」でヒロイン・吉高由里子の夫役を演じたのは功を奏した。聡明で紳士的、妻を支える村岡英治役で女性票を一気に獲得。もうとにかく、目まぐるしいったらありゃしない。