かつてホストにハマったことが原因で、会社をやめ風俗業界に。そして1億稼ぐこともあったが、結局2000万円の借金を抱えたという加奈子(仮名・48歳)さん。

 その後、彼女はどんな人生を生きたのか…? 作家の大泉りか氏による文庫『ホス狂い』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

写真はイメージ ©getty

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あっさり終わった歌舞伎町での日々

 店に呼ばれることはない、いわゆる本カノになったこともあれば、ホストクラブに行く予定のない日に、ヘルプが家の前まで迎えに来ていたこともあった。担当とケンカして殴り合ったこともあるし、こっそりとほかの女性が入れたリシャールを、ホストとともにリサイクルショップに売りさばきに行ったこともあった。当時、歌舞伎町にあったホストクラブのほぼ全店に、一度は足を運んだという。

 ところが、歌舞伎町での日々に、終わりはあっさりと訪れた。

 あるとき、新宿二丁目の売り専で働く男性キャストと遊ぶことに目覚めた加奈子は、歌舞伎町から明治通りを渡った向こう側の二丁目に、飲みの河岸を変えることとなったのだ。

「売り専で若くて犬みたいでかわいいOって子に出会って。同時期に女性用風俗も通ってみて、そっちも悪くなかったし、働こうかなって労働意欲も湧きそうになったんだけど、女に身体を売る男のために売春するのかってバカバカしくなって、売り専のほうに傾きました。売り専の男の子は、一晩買っても10万くらい。男の人だと一時間6000円でAFとかできるけど。女性客に性的なサービスをすると、売春になってしまうので禁止されていて。だからわたしは飲み連れっていうんですけど、Oを指名して一緒に飲みに行ってましたね」

 売り専は男性同性愛者向けの風俗店だが(女性が利用できる店もある)、ホストで稼げなかった若者も多く在籍している。

「そういう子たちは、顔はいいけど頭はバカが多い。歌舞伎町でホストで稼げなかった子が流れてくるわけだから。『客と話をしなくて楽、男に身体を売ろうが、顔を見なきゃいい』っていうような、とんでもなく自堕落な人も多くて。Oは、元ホストではなく、借金のカタに売られてきたんだけど、もう借金は返し終えていて。『ノンケだから、あがりたい(店を辞めたい)』『貸し切りにしてほしい』って毎日のように電話がかかってきて。仕方ないから通って、最終的に水揚げ(夜職を辞めてもらうこと。代わりに生活の全てを引き受ける)してあげて一年くらい家で飼っていたら、さすがに暇を持て余し始めたのか『ホストをやりたい』って相談してきたんです」