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 ところが、金正恩氏は南北首脳会談の翌日、9月21日付の親書で、トランプ氏に対して「文在寅大統領ではなく、閣下と直接、朝鮮半島の非核化問題を協議することを希望する」と訴えた。当時の米側の政府関係者によれば、北朝鮮は韓国の「おせっかい」に腹を立てていたという。トマス・シェーファー元駐北朝鮮ドイツ大使は「親書は、平壌がソウルとの交渉において誠実ではなかったことも示している」と語る。韓国政府の元当局者によると「金正恩はトランプを説得するための道具として文在寅を使ったが、役に立たないので切り捨てたということだろう」。

 こんなひどい扱いを受けていながら、文在寅氏は北朝鮮への未練が捨てきれない。回顧録では、「韓半島平和プロセス」と名付けた北朝鮮政策が破綻したのは、ポンペオ氏やボルトン元大統領補佐官らトランプ氏の側近たち、そして安倍晋三元首相らの責任だとしている。安倍氏ら日本政府が当時、米韓合同軍事演習の中止などに反対したことについて、内政干渉に近い動きだとして不快感も示した。安倍氏は19年6月、大阪で開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の際、文氏と会談しなかった。文氏は回顧録で「寂しいし、不愉快だった。日本は本当に度量のない国だと思った。今や日本は上昇する国ではなく、墜落する国だと強く感じた。しかも訪問した客なのに、非常に心の狭い外交を見せたということだろう」と語った。

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“片思い”の行方は…

 ただ、文在寅氏のこうした主張が通じるのは、韓国の40~50代までの層に限られているようだ。韓国の専門家の1人は「MZ世代(1980年代半ばから1990年代初めに生まれたミレニアル世代と、1990年代後半から2010年の間に生まれたZ世代を合わせた世代)にとっての北韓(北朝鮮)は、信頼すべき友人ではなく、延坪島を砲撃し、(韓国軍哨戒艦の)天安艦を沈めた敵」と語る。

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 韓国政府が今年3月に発表した調査結果によれば、韓国の小中高生で「統一が必要だ」と答えた人は49.8%で、2014年の調査開始以来、初めて半数を割り込んだ。金正恩氏も今年初め、韓国との平和統一政策を放棄し、韓国を敵視する姿勢を強く打ち出した。北朝鮮は5月28日から29日にかけ、ゴミや汚物が入った風船260個を韓国に向けて飛ばした。金与正党副部長は談話で「表現の自由の保障を叫ぶ自由民主主義の亡者たちに対する誠意の贈り物」とうそぶいた。日本政府関係者は「北朝鮮は韓国による吸収統一を恐れている。韓国で再び、進歩勢力が政権を握っても、北朝鮮は二度と南北対話には応じないだろう」と語る。

 文在寅氏の「北朝鮮への片思い」は世間を散々騒がせた挙句、「実らぬ恋」として終わりそうだ。