主演映画『碁盤斬り』が公開中の草彅剛氏。キャスターの有働由美子氏との対談で、撮影時のエピソードや俳優としてのスタンス、また近年における心境の変化などを語った。
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「草彅さんには褒められたことがあります」
草彅 有働さんに会ったら、NHKの『紅白歌合戦』のリハーサルで履かれていたブーツの話をしようと思っていたんです。
有働 よく覚えていらっしゃいますね! たった15秒ほどの会話でしたが、安い古着屋で適当に買ったブーツなのに、草彅さんに「いいですね」って褒めていただいて。
草彅 イタリアのゴールデングースというブランドで、僕も好きだったので印象に残ったんです。
有働 お洒落なブランドだとは全然知りませんでした。私は「私服がダサい」って言われるので、いつも「草彅さんには褒められたことがあります!」って言い返してます。
ファッションの話が出たついでにアピールさせて頂きますと、誌面では分かりづらいかもしれませんが、生まれて初めて髪を脱色して、染めました。
草彅 とても似合ってますよ。
有働 って、言わざるを得ない流れですよね(笑)。NHKにいて、その後も報道番組をやっていたので「不良のようなことはやってはならぬ」と思っていましたが、3月末に『news zero』を卒業して、その翌日には「この支配からの卒業〜」(「卒業」作詞/作曲:尾崎豊)という気持ちで染めました。今日が、髪を染めてからの初仕事です。
草彅 いいですよ、その色。新しい世界に入って、ふつふつと燃えたぎる感じで。これは赤ですかね。
有働 フランス人のカラーリストが「赤ではないけど赤」と言っていました。私の遅れてきた反抗期みたいなものです。草彅さんは反抗期ありましたか?
草彅 僕はいつも反抗していますよ。よく、「剛君は怒らないの?」と聞かれるのですが、実は常に怒っているんです(笑)。常に怒っているから、怒っているように見えないだけで。
怒りをエネルギーに
有働 何に怒っているんですか?
草彅 たとえば人間って誰もが死に向かって生きていますよね。それにイライラするんです。
有働 え? わからん。
草彅 人は生まれた瞬間から否応なく歳を取り、いつか死に直面するのは避けられない。その現実にイライラしてしまう。その怒りをエネルギーに変えて活動しているんです。有働さんも意識していないだけで絶対あります。怒り、出てますよ。
有働 確かに、ニュース番組の間は、ずっと怒っていたかも。世の中に対して腹を立てたり、至らない自分自身にも……。
草彅 自分に対しても苛立ちますよね。演出家のつかこうへいさんに「剛は自分の存在に対してイライラしているんだよ」と、言われたことがありました。その時は何言っているんだろうと思ってたんだけど、最近、理解できるようになりました。有働さんをテレビで見てて、やっぱり抑えてても反骨心のようなものが出ていたと思う。それが遂に解き放たれた。
有働 お恥ずかしい。
草彅 いや、いいと思います。僕も真似して、髪を赤にしてみようかな(笑)。