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撮影中に我慢したピザ

 有働 今回の映画の撮影で苦労したことはありましたか?

 草彅 大好きなクアトロ・フォルマッジが食べられなかったこと。カマンベール、モッツァレラなど4種類のチーズが乗ったピザで、泊まっていた京都のホテルのものが絶品なんです。でも、格之進は貧乏な浪人という設定だったので、撮影中は我慢しました。

脚本を担当した加藤正人氏が書き下ろした小説『碁盤斬り 柳田格之進異聞』(文春文庫)

 有働 「一口ぐらいなら……」と食べてしまわないですか?

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 草彅 食べませんね。演技に説得力が無くなるんですよ。上半身を脱いで神経を研ぎ澄ますシーンもあったので、贅肉がプヨプヨ付いていたら、「あいつ、美味いもの食ってるじゃん」と思われる。だから我慢しました。あと苦労したことで言えば、仇討ちの旅でボロボロになっていく様を見せるために、顔にホンモノの泥を塗るんですよ! あれは拷問です。

 有働 うわっ、乾いてカピカピになりますよね。

 草彅 そうそう。するとまた塗り足すんですよ。それも朝イチからですからね。寝起きで顔に泥を塗られるって……。

 有働 普通ではありえない。

 草彅 髭も徐々にボサボサになっていくのですが、特殊メイクで1本1本植えていく。それがとにかく痒い。花粉症の季節だったので鼻水も出てしまうし、泥も塗られている。その怒りが演技に活きた!

 有働 風雪の中を、仇(かたき)を探して歩きまわる迫真の演技に活きたと。

 草彅 そうそう。痒くても掻けないのに「はい、本番です」と言われたら演技をするしかない。でも、それがまさに格之進の人柄を表している。痒くても掻かないぞ、という武士の心です(笑)。

草彅氏と有働氏の対談「演技で大事なのは台本より睡眠と筋肉です」全文は、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

文藝春秋

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「演技で大事なのは台本より睡眠と筋肉です」

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