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「これは陰謀に違いない」

「すべて日産の陰謀だ」

 しかし彼の罪は明らかである。

 長期間にわたってその事実が明るみに出なかったのは、彼と彼の取り巻き連中が巧妙に事を進めたからにほかならない。ゴーンはこう思ったのではないか。

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「絶対にバレないはずだったのに、いったいどうして発覚したのか。私のような外国人にコントロールされるのを嫌う日本人、ルノーとのアライアンス(企業連合)の強化を恐れる日本人……。彼らが私を陥れるために、いろいろと根掘り葉掘り嗅ぎ回ったのだろう」

「そうだ、これは陰謀に違いない」

カルロス・ゴーン ©文藝春秋

 外国人や外国企業にコントロールされるのを嫌う日本人は、日産社内に限らず一定数いるだろう。ゴーン事件について内部告発をした人、内部調査にかかわった人たちの心中にその種の思惑がどれほどあったのか、社長の私さえあずかり知らぬところで始まった調査だから推測の域を出ないが、ゼロではなかったかもしれない。

 しかし、内部調査と検察の捜査で露呈したゴーンの背任行為は「法に触れるとは知らなかった」といったレベルではなく、明らかな確信犯だった。発覚した不正行為の悪質さは彼らの想像をはるかに超えていたに違いない。

 内部調査の結果を聞かされた時、私は耳を疑った。

 当時のゴーンはアライアンス強化に向けて強引さを増していた。そんなゴーンに対して、日産社内で非難の声が高まっていたことも確かだった。とはいえ、ルノー・日産自動車・三菱自動車のアライアンスを率いていくにはまだまだゴーン会長のリーダーシップが必要だと私は思っていたのである。