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「トリュフォーに作品を褒められた」と自慢

 小説の生原稿だけではない。延啓氏の手によって、映画、演劇、絵画など多岐にわたった慎太郎氏の創造の過程を物語る遺品が続々と発見されている。

 慎太郎氏が監督を務めた映画「若い獣」(1958年)、「二十歳の恋」(1963年)の絵コンテも見つかった。「若い獣」は、慎太郎氏の原作を映画化した監督デビュー作。「二十歳の恋」は、フランス、ポーランド、イタリア、ドイツの4人の映画監督とともに作ったオムニバス映画だ。シナリオに入念に描き込まれたカメラ位置やカット割りからは、慎太郎氏の並々ならぬ意気込みが感じられる。

〈(『二十歳の恋』の)他の国の監督は、フランソワ・トリュフォーやアンジェイ・ワイダなど錚々たる顔ぶれです。共通のテーマは「恋と青春」だったのに、父は1人の工員が思い余って若い女性を殺害してしまう陰鬱な題材を選んで映画を撮っています。

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 撮影風景を収めた写真やシナリオを発見する中で、「二十歳の恋」ポスターをパネルにしたものが自宅の廊下に掛かっていたのを思い出しました。私が「これは何?」と聞くと、父は「トリュフォー等と一緒に映画を撮ったんだけれども、最後に彼から『今回はお前の勝ちだな』と作品を褒められたものだよ」と自慢げに語っていたのを覚えています〉

映画「二十歳の恋」の絵コンテ 

「文藝春秋」7月号(6月10日発売)及び「文藝春秋 電子版」のカラーグラビアページ「遺品が語る 石原慎太郎と昭和の青春」では、慎太郎氏が若き日に描いたドローイングや小説の生原稿、映画の絵コンテなどが一挙公開されている。また、延啓氏がそれらの背景や発見に至る過程を語った「石原慎太郎の遺品は語る」も掲載されている。

文藝春秋

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石原慎太郎の遺品は語る