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 各期とも日本美術史を代表する作品がそろい、さすがの見応えだった。それらはすべて館の収蔵品なので、また近く観られる機会もめぐってくるはずだ。

暮らしぶりや生命感まで写し取る名品絵画

 現在開催中の第4期には、過去3期に劣らぬ、いかにも皇室らしい名品が並んだ。展示テーマとしては、祝事での美術品献上などにより皇室にもたらされた品々を集成したとのこと。

 会場へ足を踏み入れ、まず目に飛び込んでくるのは、《春日権現験記絵》。鎌倉時代絵巻の最高傑作のひとつであり、むろん国宝である。明治時代に皇室に献上された。

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《春日権現験記絵》(部分)高階隆兼 鎌倉時代(1309年頃) 皇居三の丸尚蔵館収蔵

 奈良・春日大社の創建と霊験を語る内容となっており、緻密で生き生きとした描写に、つい目を凝らしたくなる。とりわけ建設作業の現場が活写されている箇所は、当時の技術が仔細に描かれていて、往時の人々の仕事ぶり生活ぶりが、手に取るように伝わってくる。

 絵巻の横のケースに収められているのは、《粘葉本和漢朗詠集》だ。鶴や亀甲などの文様が繊細に摺り出された唐紙の上を、藤原行成によると伝わる平安朝屈指の名筆が自在に走っている。優美な筆線を目で追っていると、当時の貴族たちの美意識がここに表れていると感じられる。

《粘葉本和漢朗詠集》伝藤原行成 平安時代(11世紀) 皇居三の丸尚蔵館収蔵

 奥の壁面には、江戸時代の絵師、伊藤若冲の《動植綵絵》がある。30幅からなる花鳥画で、相国寺に寄進されたものだったが、1889年に明治天皇へ献上された。展示されているのは「老松孔雀図」「諸魚図」「蓮池遊魚図」「芙蓉双鶏図」の4幅。遠目から見れば奇抜なデザイン性や、描かれているモチーフの取り合わせの妙が、まずはおもしろい。徐々に絵へ近づいていくと、あらゆる細部が寸分の緩みなく描き込まれているのに気づき、作者の繊細さと技量、根気に驚かされる。描かれたどの動物や植物からも溢れる生命感を受け取ることができて、観ているこちらも生命力がみなぎってくる。