日本美の最高峰ここにあり
次室へ歩を進めると、強烈な存在感を発する巨大な屏風に、知らず身体が引き寄せられてしまう。《唐獅子図屏風》が鎮座しているのだ。
3頭の唐獅子を金地の大画面に描いたもので、右隻は桃山時代の狩野永徳の手になり、左隻が江戸時代の狩野常信による。とくに右隻・狩野永徳の獅子は、ギラリとした眼球や渦巻くタテガミ、頑強そうな足爪が、絵から飛び出してきそうな迫力と圧力を有している。
室を奥へ進むと、雄大な富士山が見えてきた。横山大観の大作《朝陽霊峰》だ。金地の背景に浮かび上がる富士の稜線と朝陽が目にまぶしい。かつて皇居内にあった明治宮殿の豊明殿という大広間を飾るため制作されたものである。
会場内に、周囲を囲って暗くした一角がある。そっと置かれているのは、並河靖之作《七宝四季花鳥図花瓶》。漆黒の七宝釉で背景をつくり、そこに四季折々の花、樹木、野鳥を、驚くべき鮮やかさと細かさで描き込んである。いかにも日本らしいモチーフを、圧倒的な技術力で表し、完璧な仕上げがなされた逸品には、とくと時間をかけて眺め入りたい。
会場をひとめぐりすると、日本の美術と文化の基調を、ごく自然に理解できた気分になる。日本の風土に暮らしてきた人たちが古来、何を美しいと感じ、どのようなものに価値を見出してきたか。実感としてつかみとれるのである。
東京で日本の美に触れたくなったら、真っ先に足を運ぶべき場所はここだ。
INFORMATION
皇居三の丸尚蔵館 開館記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」第4期「三の丸尚蔵館の名品」
会期:5月21日~6月23日
場所:皇居三の丸尚蔵館
https://shozokan.nich.go.jp/