池上彰さんの新連載「WEB 悪魔の辞典」では、政治や時事問題に関する用語を池上さん流の鋭い風刺を交えて解説します!
【黒い霧解散・くろいきりかいさん】
政府与党に黒い霧が立ち込めると居直って解散総選挙に打って出ること。
【池上さんの解説】
1966年の後半、政界では国会議員をめぐる不祥事が相次いだ。汚職事件で有力議員が逮捕されたり、防衛庁長官(現在の防衛大臣)が長官就任後に同級生を自衛隊機に乗せたりして公私混同と批判されたりした。
さらに運輸大臣が自分の選挙区の駅に急行列車が停まるように国鉄(現在のJR)に圧力をかけたり、農林大臣が新婚の娘夫婦との外国への観光旅行を公費での業務旅行と申請していたりと、枚挙に暇がないほどの不祥事が明るみに出た。
当時、これは「政界は黒い霧に覆われている」と評された。
当時の総理は佐藤栄作。自民党総裁選挙では再選されたが、野党が国会での真相究明を求めて、国会運営は混乱していた。
すると佐藤首相は国会召集日に衆議院を解散。これが「黒い霧解散」と呼ばれた。
選挙では自民党が敗北するかと思われたが、予想外に善戦して安定多数を確保した。これにより佐藤内閣は求心力を高め、長期政権に道を開いた。
安倍晋三首相のもとで、森友学園や加計学園、財務省事務次官のセクハラ問題などスキャンダルが噴出して国会運営が困難になっているいまこそ、当時に学び、国会を解散して総選挙に踏み切ればどうかという声が国会内で出ている。
野党が頼りないので、国民は結局自民党に勝たせるから、安倍首相の基盤は固まるという算段だ。
佐藤栄作は安倍晋三首相の大叔父にあたる。「大叔父に学べ」というわけだが、さて。
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