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脚本にはお金をかけ、いい脚本ができたら企画にGOを出す業界文化がある。準備段階にお金も時間もかけるのだ。それができるのは、製作費が日本とは桁違いであり、巨額な費用を回収できるグローバルな市場が形成できているからだ。

制作準備のプロセスを大きく見直すべき

日本のエンタメは、国内市場がほどほどの大きさだったから海外展開に本腰を入れなかったとよく言われる。そのため市場が大きくならず、ハリウッドのように脚本制作に時間もお金もかけられないままここまで来た。制作準備期間が短いのも契約書をないがしろにするのも、その原因を突き詰めると市場の小ささに行き着く。

しかし最近は「国内市場だけではもたない」と、世界へ向かう空気が出てきた。だったら、制作準備のプロセスを大きく見直すべきだ。日テレ報告書にある通り、放送の1年半前に企画を決定すること、契約書締結を早期化すること。せっかく作った報告書にこうした提言があるのだから、日本テレビはそれをどうしたら具現化できるかに取り組んでほしい。

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いま、配信サービス「TVer」で人気だからとドラマ制作の本数がどんどん増えている。粗製濫造に陥りかけていないだろうか。そして個々の現場で小さなトラブルが起こり、原作者や脚本家に限らず疲弊する人たちが生まれていないか心配だ。

業界全体でこの2つの報告書を読み込んで、仲間たちと議論し、業界の明日に繋げてほしい。間違っても「机上の空論」と切り捨ててはいけない。そんな姿勢では、日本のコンテンツは世界市場へ羽ばたけないだろう。

境 治(さかい・おさむ)
メディアコンサルタント
1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。