日テレのドラマ『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子さんが急逝されたことで浮き彫りになったドラマと原作の改変問題。この問題について積極的に発言している漫画家の佐藤秀峰さんも『海猿』がフジ系でドラマ化・映画化もされたが、その過程で映像化サイドの契約不履行を理由に、映像の今後いっさいの公開及び続編新作の制作を差し止めた経緯がある。
筆者は長くテレビ誌で記者としてドラマの現場を見聞きし、かつ自分でも数本の映画を作ったことがある。その中で“成功する映像化”と“失敗する映像化”を分ける要素を痛感してきた。ドラマの例を挙げながら紹介したい。
基本的に漫画や小説を映像化する目的は、すでにヒットした作品の人気によって視聴率や興行収入を確保することにある。オリジナルのキャラクターや設定をイチから好きになってもらうよりも、すでにファンがいることが分かっている方がドラマにしても映画にしてもヒットの可能性は高くなる。
しかしその過程で、原作者(出版社サイド)とプロデューサー(映像化サイド)が「いい関係」を築けるかどうかに大きく依存する。
筆者が半世紀近く取材してきた中で、漫画がテレビドラマ化された中で最もうまくいったケースの1つが『ショムニ』(フジ系98年)だ。原作漫画の著者は安田弘之さん。
キャラクターや設定など、ドラマ化にあたって改変された箇所もそれなりに多い。そもそもドラマでは江角マキコが主人公だが、マンガでは京野ことみが演じるポジションが主人公である。根本から改変されていたのだ。なので、原作を重視するファンの中には当時ドラマのアンチだった人もいないわけではない。
だが公平な目で見て、テレビドラマ版には原作にない良さも多くあった。森本レオや高橋克実、伊藤俊人らが演じた男性キャラクターたちも魅力的に描かれ、物語に奥行きと深味を与えていた。戸田恵子は原作では関西弁のうそつきキャラだったが、標準語で話す仕切り屋に変更されている。しかしそれらの改変が視聴者に受け、大ヒットにつながった。
撮影当時から原作者サイドと映像スタッフサイドの不協和音なども聞こえて来ず、現場を取材した際も雰囲気がよく、出演者やスタッフが一丸となっているようにお見受けした。