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「セクシー田中さん」にはなく、実写化成功作品にはあった“当然の要素” 「正直なところ、脚本の段階では面白いと思えなかったんだけど…」

「セクシー田中さん」にはなく、実写化成功作品にはあった“当然の要素” 「正直なところ、脚本の段階では面白いと思えなかったんだけど…」

2024/02/15
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 もう1つ、原作者とプロデューサーが互いにリスペクトを持って接している場面が印象に残っているのが『悪魔くん』だ。つい最近Netflixでアニメ化されたが、それではなく1966年に初めて実写化された時のことだ。その原作者とプロデューサーのやり取りも忘れられない。

悪魔くん

『悪魔くん』は今でも最新アニメシリーズがNetflixで絶賛配信中という人気コンテンツだが、当時は“水木は絵柄が独特なのでテレビ化は困難”と言われていた。その空気を覆したのは、テレビプロデューサーの熱意と原作者・水木の慧眼によるものだった。

「登場する妖怪も1話毎に変えなさい」

 原作の『悪魔くん』に惚れ込んだ東映の平山亨プロデューサーが、リニューアル連載開始直前に「週刊少年マガジン」の内田勝編集長(当時)に、試し刷りを見せてもらって改めて感激したことが始まりだった。

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 その足で水木にドラマ化のお願いに行き、その場で快諾をもらったというスピード展開だ。そしてこの作品は、原作の再現ではなくテレビ用のオリジナル路線でいくことになったのだが、驚くべきことにそれはすべて水木の意向だったという。

「原作どおりに連続ものでいきたいと言ったら、水木先生がおやめなさいと言うんだよ。『自分は紙芝居をやっていたからよくわかるが、子どもたちの多くは前のお話をすっかり忘れている。だから続き物にしないで1話完結にしなさい』って。ほかにも『登場する妖怪も1話毎に変えなさい、そうすれば毎回変わる妖怪を楽しみに子どもたちは番組を観続けるようになるから』と。これは僕には目から鱗が落ちた感覚だったね。当時は“連続もの”がテレビドラマの常識だったから。だから水木先生は僕をプロデューサーにしてくれた恩人(編注:平山のテレビプロデュース作品第1作でもあった)であり、テレビの師匠でもあるんだ」(平山プロデューサー)

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