「RANCH(牧場)」と言っても「お昼ご飯(LUNCH)じゃないよ」
──言葉や文化の違いに対する不安はありませんでしたか?
井浦 自分が英語で芝居ができるのかという不安はありました。でもそれより、こんなに僕の芝居を評価してくれるスタッフやキャストのみなさんと一緒に仕事がしたいという気持ちのほうが大きかったです。
ただ、英語が話せるに越したことはないと思いました。僕が「RANCH(牧場)」と言っても「お昼ご飯(LUNCH)じゃないよ」と言われて苦労したりしましたから(笑)。
ぼそぼそ日本語を話しながら相手とコミュニケーションを取る、というシーンは、僕の実体験を交えたアドリブです。「そうだよね、ヒデキは英語が苦手なんだからそうなるね」とそのままOKをいただきました。
アメリカ映画の現場であらためて学んだ大切さ
──アメリカ映画で初主演という経験は、この先の俳優人生にどんな影響があると思われますか?
井浦 僕の場合、どこかのタイミングやひとつの作品で人生や世界観が変わったというより、いろいろな方との出会いで演技の幅も活動も広がってきたところがあります。
今作は、初めてのアメリカ映画で、初主演という大役でしたが、「現場で思ったことは、素直に意見を出し合う」ことの大切さをあらためて学んだ気がします。
相手への敬意や感動を伝えることは、今までもしていなかったわけではありませんが、これからはもっと積極的にできるようになっていきたいです。
いうら あらた 1974年東京都生まれ。『ワンダフルライフ』(99年)で映画初主演。『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(12年)で日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞、『かぞくのくに』(12年)でブルーリボン賞助演男優賞を受賞。近作に『ゴールデンカムイ』(24年)、『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(24年)など。俳優業の他にミニシアター支援プロジェクトにも携わるなど、多岐にわたる活動を行う。
山口恵理子=スタイリング
上野健太郎=ヘアメイク
衣装協力: NEPENTHES
『東京カウボーイ』
INTRODUCTION
山田洋次監督の弟子入りを志願して『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』(89年)にも参加したことがあるマーク・マリオット監督が、自身の異国体験もふまえて企画・原案を手がけた。
主人公のサカイヒデキを演じるのは、アメリカ映画初主演となる井浦新。アメリカ在住で脚本家としても活躍する藤谷文子や、国際派俳優・國村隼らが共演し、モンタナの原始的な風景を舞台に、“異邦人”が経験するさまざまな感情を描く普遍的なヒューマンドラマとなっている。
STORY
東京の大手食品商社に勤めるサカイヒデキ。上司で副社長のケイコと婚約しているが、仕事で思うような成果を出せない焦りも抱えている。そんななか、会社が米国モンタナ州に所有する経営不振の牧場を収益化する話が持ち上がる。
役員たちが土地開発業者への売却を進めるなか、希少価値の高い和牛への切り替えで牧場再建を提案したヒデキ。和牛畜産業専門家のワダと共にモンタナに向かうが、そこには文化も常識も異なる世界が待っていた──。
STAFF & CAST
監督:マーク・マリオット/脚本:デイヴ・ボイル、藤谷文子/出演:井浦新、ゴヤ・ロブレス、藤谷文子、ロビン・ワイガート、國村隼/2023年/アメリカ/118分/配給:マジックアワー/6月7日公開