34期連続で増収増益を成し遂げ、売上2兆円のドン・キホーテ。無一文から日本を代表する創業経営者へ――そんな大成功の裏には「運」の存在があった。
ここでは、ドン・キホーテ創業者・安田隆夫氏の新刊『運』(文春新書)を一部抜粋して紹介する。安田氏は「運には2種類ある」と提唱する。個人にまつわる「個運」、そして会社や組織にまつわる「集団運」。この2つを徹底的に磨き上げることで現在の地位を確立したという。カリスマ経営者が生涯をかけて学んだ、人生とビジネスにおける「勝利の法則」とは?(全2回の1回目/続きを読む)
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私はこれまで、「戦略や戦術を語る前に、まずは戦闘モードを全開にせよ」と、口を酸っぱくして現場に、戦う姿勢の重要性を唱えてきた(いまだに唱え続けている)。
私が嫌いなのは、戦略や戦術をごちゃごちゃ言うわりに、実際には戦闘をしないタイプの人間である。こういう輩が社内で幅をきかせるようになるのを、私は何よりも恐れている。そうなれば個運はもちろん、「集団運」を一気に落としかねないからだ。
戦闘モードを全開せずに運を落とした、「他山の石」とすべき事例はいくらでもある。
日本家電メーカーの凋落
例えば、日本の家電メーカーや半導体メーカーだ。かつて日本の家電製品は、安さと品質の良さで世界市場を席捲した。また1980年代後半、日本の半導体は世界シェア1位の座にあった。ところが、今やどちらも往時の勢いは見る影もない。この数十年で中韓台(中国・韓国・台湾)の新興メーカーにあっさりと追い抜かれ、完全に逆転されたのは、皆さんもよくご存じの通りである。
その凋落の要因は色々と指摘されるだろうが、最大の要因は、日本のメーカーが「世界一流」の座に安住して、「戦わないサラリーマン集団」に落ちぶれてしまったことにあるのではないか。繰り返すが、戦う姿勢を堅持しなければ運は落ちる。日本の家電・半導体メーカーは、中韓台メーカーの旺盛なファイティングスピリッツの前に、あえなく惨敗を喫したわけである。
日本と中韓台の経営の違い
もちろん、中韓台メーカーで働く人たちに比べ、日本のメーカーの従業員たちの能力が劣っていたわけでも、ヤル気がなかったわけでも、慢心していたわけでも決してないだろう。これはひとえに、トップの経営気質と姿勢の問題だ。先ほども述べたように、将が勇敢でなければ、強力な部隊をつくることは出来ない。