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長くつきあえる医師を主治医に

 乳がん治療のほとんどは、手術だけでは終わらない。たとえば、乳房温存手術をした場合は、術後に放射線治療を行うのが標準治療となっている。これによって、乳房内再発が約3分の1に減るからだ。乳房を切除した場合も、胸壁や腋窩リンパ節からの再発を予防するため、放射線治療をすることが多い。したがって、乳がん手術を受ける場合には、放射線治療医との連携体制も確認すべきだ。

 そのうえ、乳がんは比較的ホルモン剤や抗がん剤が効きやすいので、術前術後に長期にわたって薬物療法を行うことが多い。増殖能が高いか低いか、ホルモン受容体が陰性か陽性か、HER2(がん細胞に多く発現するタンパク)が陽性か陰性かによって、5つのサブタイプに分けられ、それぞれ推奨される薬物療法の種類や組み合わせが異なっている。

 また、最初の薬物療法の効果が落ちた場合は、薬の種類や組み合わせを変えながら、治療を進めていくことも多い。再発・転移した患者でも、このように薬物療法を続けていることで、長期生存を果たしている人がいる。それだけに、手術だけでなく、放射線や薬物治療にも詳しく、長くつきあうことのできる医師を主治医に選ぶことが大切だ。

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 その目安となるのが、日本乳癌学会が認定する「乳腺専門医」の資格を持っているかどうかだろう。この資格を取得するには、同学会が認定した施設で5年以上の修練を行い、100例以上の乳がん診療経験を有するなどの条件を満たしたうえで、筆記試験と口頭試問に合格する必要がある。乳腺専門医の名前や所属は、同学会のホームページ(http://www.jbcs.gr.jp/)に掲載されており、2016年1月1日現在で、全国に1376名が認定されている。

乳がんのリスクが高い人は?

 乳がんは、この病気になりやすい人がいることもわかっている。

 まず、遺伝的にリスクの高い人がいる。その可能性があるのが、若いうちに乳がんや卵巣がんになった家族、親せきのいる人だ。また、すでに乳がんになった人では、両乳房にできた人、片方に2回以上できた人、男性なのになった人が、遺伝性の可能性がある。日本人の乳がんの約10%が遺伝性と推測されている。

 他に、初潮が早かった人、閉経が遅い人、出産経験のない人や初産年齢の高い人、授乳経験の少ない人、肥満の人、ホルモン補充療法を5年以上受けた人も、疫学調査で乳がんのリスクが高いことがわかっている。

 これらの条件にあてはまる自覚のある人は、時折自分の乳房を触ってみて、気になるしこりやひきつれ、乳汁が出るなどの症状があるときは、早めに専門医に相談してほしい。

 なお、乳がんのマンモグラフィ検診は、40歳未満の人には推奨されていない。検診を受けると早期発見のメリットがある一方で、命に関わらない病変をたくさん見つけ、不必要な精密検査や治療を受ける恐れもある。検診にはこうしたデメリットもあることを理解したうえで、有効に活用してもらいたい。

出典:文春ムック「有力医師が推薦する がん手術の名医107人」(2016年8月18日発売)