煮え切らない小泉進次郎
一方、岸田を降ろしたい非主流派にとって、石破が岸田に取り込まれれば、大きなカードを失うことになる。次善の策として名前が浮上しているのは、元環境相の小泉進次郎だ。非主流派の棟梁的存在である前総理の菅義偉は「進次郎はどうだ」と親しい議員に聞いて回っている。
ただ当の進次郎は周囲に「今は子育ての時期だ」などと後ろ向きの姿勢を示し、今一つ煮え切らない。愛妻滝川クリステルとの間に第二子が誕生したのが昨年11月。今は夜の会合もできる限り断っている。
もう一つの関門は、現段階での出馬に慎重な父親・純一郎の存在だ。純一郎は先の石破との会合でも「進次郎は50歳までは総裁選に出さない」と発言し話題となった。まだ43歳の進次郎は、「あんな発言を報道する価値があるのか。50歳とか俺はまったく気にしない」と周囲に語っている。しかし父親に従順な進次郎が反対を振り切って総裁選に出馬できるのか。懐疑的な見方も根強い。
さらに「小石河」の一角、デジタル相の河野太郎も迷える候補の一人だ。今も淡々と総裁選に向けた準備は進めているものの、ネックとなるのは親分・麻生の判断だ。
5月21日夜、2人は都内の料理屋で会食し、珍しく近くのバーへ二次会に出かけた。麻生は河野が党四役を経験していないことを未だに気に掛け、慎重な姿勢を崩していない。河野周辺はこう話す。
「いざという時は麻生派を離脱して総裁選に打って出ることも考えるが、麻生さんを敵に回すのならマイナスだ。また河野さんにとって麻生派は『自分の家』という感覚が強い。飛びだすのは簡単な決断じゃない」
また、他の「小石河」の動きも気になるようだ。河野周辺は「石破さんと河野さんが両方立候補するのは考えにくい。支持者が被って食い合ってしまう」と語る。マイナンバーカードの問題を巡って世論の支持にも陰りが見える河野。出馬に向けたハードルは依然として高い。
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本記事の全文「石破不出馬という岸田の皮算用」は、「文藝春秋」2024年7月号、および「文藝春秋 電子版」に掲載されています。