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 大学在学中での起業を決断したのは、数年後にオリンピック開催が決まっていたから、このビッグウェーブにのらない手はない、面白くないホテル業界を変えるのは絶対に自分でありたい、他の人にやられたら悔しすぎると思ったからです。

ゴールドマン・サックス時代の教え「資産運用なんてするな」

田内 その発想がすごいですよ。僕は日本の金融教育の話をよくする中で、投資する側ではなく、「投資される側になる人」こそ増えなくてはならないとずっと訴えてきました。金融教育というと、とかく投資リテラシーの話にばかりなりがちですが、「投資」ってそもそも他力本願的。つまり、投資した先の人が頑張って働いて、その会社がつくり出したモノやサービスが売れて、その利益が配当として返ってくる仕組みなわけです。

©AFLO

 意外に思われるかもしれませんが、僕がゴールドマン・サックス時代に言われたのは「資産運用なんてするな」ということ。「そんなことに時間を使っている暇があるなら、目の前の仕事をしろ。そのほうがちゃんと報われるぞ」と。自分の仕事で価値を生むことが大切だし、自分で新しいビジネスをはじめようという人たちが育たないと社会は発展しない。

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 でもこういうことを言うと、そんなの意識が高い一部の人の話ですよという反応がよく返ってくるんですね。

龍崎 私自身、まさに「意識高いね」とよく半笑いされてきました。「女の子は夢を追いかけられていいね」みたいなチクチク言葉を投げかけられつつ。私の学生時代の学内の起業サークルでは、数年後のM&Aを前提に事業を考える人も多くいて、まずエンジェル投資家に投資してもらって、ストックオプションを発行して、どうやって最短でバイアウトするかが正攻法として語られていました。私のように「これを絶対に変えたい」という独善的な願望にもとづいて事業をしている人はすごく少なくて。

龍崎翔子氏

田内 龍崎さんのように自分で起業して社会のために何かをしたいという人の絶対数が少ないのが、今の日本の大きな問題だと思っています。アメリカとか他の諸外国でも起業って普通に当たり前のことなんですよ。

 これは僕自身を振り返っての後悔なのですが、僕は東大にいた頃、プログラミングの研究をしていたんですね。大学対抗のプログラミングコンテストのチームでもけっこう頑張っていたし、在学中からあるベンチャーでシステム開発の仕事もしていた。折しもドットコムバブル期、Googleを創業したスタンフォード大学のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは自分たちで社会にある不便なものを解消しようとしていた。

 そういう挑戦をしてもよかったはずなのに、僕は2003年に大学院を辞めてゴールドマン・サックスに入社したわけで。

龍崎 でもその頃のゴールドマンって今のような大企業ではなくて、もう少しマイナーでチャレンジングなところだったんじゃないですか?