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〈未来への贈与〉となる働き方をサポートするのがお金

田内 少しずつメジャーになりかけていた頃で、外銀とか外資系コンサルと一緒に受けてみよう、みたいな雰囲気でしたね。「自分の得意な数学を使って、世界の人たちと戦いたい」という理由などから僕はその道を選んだわけですが、トレーダーとして資本主義の最前線で16年間どっぷりと浸かった果てに見えてきたのは、お金で大切なのは増やすことではなく、「お金をどこに流してどんな社会を作るか」という本質でした。

 だから僕はいま金融教育家として、その事業に取り組むことによってどう人を幸せにするのか、その商品やサービスでどう社会を発展させようとしているのか、未来への贈与となるような働き方を応援していきたいし、お金はそのサポートなのだということを教育的に浸透させていきたいと思っています。松下幸之助さんの水道哲学じゃないですが、いま社会の中で当たり前のようにいろんなものを使える便利さは、すべて過去からもらった恩恵です。そこに現役世代がどんな新しいものを付与するかで、未来に残していくものが決まりますから。

田内学氏

龍崎 本当にそう思います。私はこの事業を心から愛せるからやっていて、仮に人生二周目があったとしても別のことをしたいとは全く思わない。やっぱり30年後にも同じようにホテルの仕事をやっていたいですね。

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 ご著書の中でも書かれていましたが、そもそも世の中にお金がいくらあっても、サービスを提供してくれる人がいなかったら使えませんよね。「お金があること=豊か」ではなく、真の豊かさとはサービスを提供してくれる人がたくさんいる社会であること。多様な事業者がサステナブルに仕事を続けられるのが豊かさの鍵ですよね。

日経平均株価は“自然現象”ではない

田内 本当にそう思います。豊かさというと、GDPがどうとか、キャリア教育とかの話ばかりになりがちですが、龍崎さんのように、多くの子どもたちが、若者が、いろいろな夢をもてることが大切です。もっと挑戦が許される社会になって、そこに適切な投資がなされるべきだとも思います。

 あと常々感じるのが、日経平均株価ってビジネスパーソンの間でもまるで自然現象のように話されるでしょう。お天気のように上がった下がった、来週の予測はどうとか。もちろん複合的な要因はありますが、シンプルに突き詰めれば、日本の企業が元気で業績が上がって、消費が伸びれば日経平均は上がるわけです。

龍崎 自然現象じゃないんだから(笑)、日経平均を引っ張っていくのは自分なんだという気持ちをみんなで持つのがいい。豊かなサービスがあふれる社会を一人ひとりの手でつくっていくんだ、と。私たちの力で日経平均、爆上がりさせてやりたいっすね!

田内 そんなマインドの仕事こそが未来への贈与を生みますね。『クリエイティブジャンプ』を読んだら、自分でも果敢に挑戦してみたくなる人が増えますよ(笑)。

龍崎 今日はとても刺激的なお話をありがとうございました!

田内 こちらこそありがとうございました!

(誠品生活日本橋にて)

『クリエイティブジャンプ 世界を3ミリ面白くする仕事術』(龍崎翔子 著)
『きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』(田内学 著)

龍崎翔子(りゅうざき・しょうこ)
1996年生まれ。ホテルプロデューサー、株式会社水星代表取締役CEO。東京大学経済学部卒。2015年、在学中に株式会社L&Gグローバルビジネス(現・水星)を設立し、北海道・富良野でペンション運営を開始。その後、関西を中心に、ブティックホテル「HOTEL SHE,」シリーズを展開し、湯河原、層雲峡をはじめ全国各地で宿泊施設の開発・経営を手がける。クリエイティブディレクションから運営まで手掛ける金沢のスモールラグジュアリーホテル『香林居』がGOOD DESIGN賞を受賞。ホテル予約プラットフォーム『CHILLNN』や産後ケアリゾート『HOTEL CAFUNE』など、従来の観光業の枠組みを超え、〈ホテル×クリエイティブ×テック〉の領域を横断し、独自の事業を展開する。

田内学(たうち・まなぶ)
1978年生まれ。社会的金融教育家、元ゴールドマン・サックス金利トレーダー。2001年東京大学工学部卒。同大学院情報理工学系研究科修士課程修了。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングを経て2019年に退職。著書に『お金のむこうに人がいる』など。最新刊『きみのお金は誰のため』で「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」総合グランプリ及びリベラルアーツ部門第1位を受賞。